泡沫の時 ページ7
夏特有の蒸し暑さに苦しみながら、少女はバス停にかれこれ数時間座り込んでいた。
一度乗り過ごしてしまうとしばらく次が来ないのが田舎の宿命で、放課後呼び出した教師の顔を思い浮かべぶつくさと文句を連ねる。
「今日は一段と日が照っているねぇ」
急に声をかけられ反射的にパッと振り返る。
さっきまでここには少女一人しかいなかったというのに、いつの間にかすぐ隣に若い和装の男が座っていた。
都心からもかなり離れている村なので着物を身につける村人はよく見かける、がこんな男いただろうか。
「そんなにも私の顔を見つめて、何かついているのかい? お嬢さん」
「い、いえ……見かけない顔だなぁと思いまして……」
「そうかい? キミよりずっと昔から住んでいるんだけどなぁ……」
いくら暑さで頭が回らないとはいえ初対面がどうかの識別くらいはつく_もしかしたら山の中の方に住んでいるのかもしれない、男性とは思えない白い肌を持つ彼を観察しながら少女はそう考えた。
「暑い暑いと言っている割に、あんまり汗かいてませんね」
「はは、結構この着物通気性が良いんだよ」
だからこの扇子もいらないんだよね、君の方が必要そうだしあげるよ。
断るすきも与えられず手に握らされ、興味本位で開く。
紫、青、桃_色とりどりの美しい朝顔が描かれている、触ってみると思いのほかしっかり出来ている、芸術品に疎い彼女でもそれなりに値の張る一品であると察しられた。
やはり貰うわけにはいかない、と男を説得するも自分は使わないからの一点張り。
仕方なく譲り受けバスが来るまでの間青年と話しながら扇子を扇いでいた、小さいながらも首筋を通り抜ける風が心地よい。
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恋花-renka-(プロフ) - 7さん» すいません。ありがとうございます直しておきます!、 (2017年10月15日 16時) (レス) id: a7985c3076 (このIDを非表示/違反報告)
紅緋(プロフ) - 7さん» 誤字訂正についてのお知らせ、ありがとうございます。作者に言っておきますね。 (2017年10月13日 23時) (レス) id: f5f16bb771 (このIDを非表示/違反報告)
7 - ファンファーレに乗せて。の「まじか」は「まぢか」ではないでしょうか?漢字に変換しますと「間近」となりますので……。 (2017年10月13日 23時) (レス) id: edc28a4a4f (このIDを非表示/違反報告)
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