7日目 ページ9
試験官を抜かせば、そのまま大幅に駆け上がって外へと到着する。
「「ゴールッ！」」
そして、後ろを振り返れば、まもなく三人が同時に地下から出て来た。
「A……お前、くっそ早い……！」
「Aが1番だな」
「じゃあ、Aにおごるんだね！」
「……別に奢らなくていい。
ロクサスもさり気なく仲良くなるな」
仲良しグループの様な会話に終止符をつければ、オレは辺りを見回す。
「……湿地帯か」
目の前に広がっているのは、全ての方向が霧に覆われている湿地帯だった。
とても二次試験会場とは思えない雰囲気だが……
___少し時間が過ぎ、この湿地帯に辿り着く者も徐々に増えていく。
程無くして、階段のシャッターが下りたのだった。
此処はヌメーレ湿原と呼ばれる場所らしい。
この湿原には人間を騙して捕食する生物が存在する様で、命も落とす事もあるとの事。
「騙されることのないように注意深く、しっかりと私のあとをついて来てください」
そして、試験官がそう言った直後に、背後から大きな声が聞こえた。
「ウソだ！ そいつはウソをついている！」
振り向いて見ると、其処には傷だらけの人間らしき者が試験官を指差して半狂乱に叫んでいる様子が窺えた。
「そいつはニセ者だ！ 試験官じゃない！
俺が本当の試験官だ！！」
……成る程、確かにこれだけ知能が高いと人間くらい簡単に騙す事が可能だな。
だが、其奴はやはり獣だ。垣間見えるその心からは誤魔化しきれないものがある。
「……はぁ」
騒ぎになって延期される……だなんて面倒な事になるのを避ける為にも、とっとと始末する事にした。
そうして、魔法を使おうとすると___
「うわっ！」
「……ッ！」
避け切れなさそうだったロクサスの所に飛んで来たトランプを弾き、此方にもやって来たそれをファイガで燃やし尽くす。
……出来れば関わりたくもなかったのだが。
其奴はオレとロクサスの他に、試験官と獣に向かっても投げていたらしい。
獣は避け切れず、頭に刺さって死んだ。
「くっく……♧ なるほどなるほど♤」
其奴は、オレ達が最初に来た時に遭遇したあの道化師のような者だった。
恐らく此方が彼方に気が付いていたのを同様に、彼方も気付いていながらも確認の為に投げたのだろう。
……唯走るだけでは無く、彼奴には近づかない様にしなければ。
そして騙される事の無い様に、慎重に進まなければならないな。
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作者名：レフト | 作成日時：2017年5月27日 19時
