4日目 ページ6
___ロビーにて。
「いいなぁ、ロクサス。
Aと一緒に任務ができて……」
ロクサスを羨ましそうに見つめるその人物。
黒髪の少女___シオンは、テーブルに頬杖をつきながらも呟いた。
「……オレと一緒に任務を遂行して何があるんだ？」
何か利点でもあるのだろうか。
その事について思考を巡らしてみるも、あまり良く分からない。任務の同行者なんて別に誰でもいいだろう。
「……シオン、Aにはわかってないみたいだぞ」
「うん、わかってる。
……Aのこういう所もいいよね」
……こういう所？
道筋の全く読めない会話に、オレは先程から首を傾げてばかりだ。すると、シオンが何かを考えた後に、その表情を笑顔に変えた。
「まあ、振り向いてもらうには、アタシが沢山アタックすれば良いだけの話だよね！」
「アタック……？
先程からお前らは何の話をしているんだ」
全くもって理解が出来ない。
何故か急にやる気を出し始めたシオンに、呆れた様な視線を此方に送るロクサス。いや、オレがそうしたい限りだ。
「まあ……Aはそのままで良いと思う」
「うん、Aは知らなくてもいいよ。
よし……じゃあ、早速アタックだ！」
アタックとは何の事だ……何の攻撃なんだ……？
何かを仕掛けてくると思わず身構えた矢先、感じたのは体の温もり。何故だかシオンはアタックと称して此方に抱きついてきたのだった。
「……何だ」
突然の事に行動選択を迷ったが、取り敢えず話を聞いてみるとする。
「……アタシね、他の人にAが取られないように、一緒にいたいんだ」
そう答えたシオンは、ぎゅっと抱き締める力を強くした。
少女でありながらもその力強さは、いつかの時に感じた執着というものに似てて。
もしや、と思えば途端に背筋に氷が伝う様な感覚に襲われた。それに連なり、何かの光景が徐々に記憶から浮き出てくる。
嫌だ。思い出すな。
「や……い、いや……」
「……！！ シオン！Aが苦しそうだ！ 」
ロクサスの言葉に気がついたシオンは、慌てて離れては「ごめんね」と謝る。
……謝るな。別にお前は何も悪く無いんだ。
乱れた呼吸を整え、オレは拒絶を詫びた。
そして、その代わりにと告げる。
「……いつかシオンとも任務を遂行する時が来るだろう。それまで待っていれば良い。
……すまない、オレは部屋に戻る」
シオンの頭を撫でては部屋へと歩き出す。
頭の中は絡まった糸の様で、その足取りも何だか覚束なかった。
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作者名：レフト | 作成日時：2017年5月27日 19時
