37日目 ページ39
「……これで如何だ?」
最後のハートレスを倒し終わり、男の方に振り向く。すると、其奴は僅かに目を見開いていた。
「……驚いたな……もしかしてだが今の奴らを知っているのか?」
「知っているが」
ぶっきら棒に答えれば、微かな笑みを湛えた男。
その異様な冷静さは、さながら心の存在しないオレ達ノーバディの様に思える。表情が変われど、感情がまるで読み取れないんだ。
「そうか……じゃあ合格だ」
「……何がだよ」
何かを察しでもしたのか、ロクサスはオレを庇う様に前へと足を踏み出す。
流石のロクサスもこの状況に弁別が付いており、攻撃を仕掛けようとはしない。
その様子に男は笑みを一層深め、口を開いた。
「一定期間、俺の物になるだけだ。
安心しろ。 終わったら生きたまま解放してやる」
……俺の物? 何だそれは。
男の奇怪な回答に、思わず首をかしげる。
しかし、それよりも気を引いた言葉があった。
「……一定期間とはどの位だ」
その返答によっては、危険だが此処を脱出せざるを得ない状況になる。
ああ、何故こんな面倒な事に巻き込まれるのだろうか。彼方も此方も……まるで八方塞がり。
「1週間? 1ヶ月? どうだろうな……しいて言うなら、俺が飽きるまでか。
だが、俺はお前らが気に入ったらしい……特にA。お前がだ」
「……だったら」
悩む事で重くなる思考を何とか巡らして、辿り着いた結論。
それは、闇の回廊を開く事だった。
「うわっ!? Aッ!」
勘付いた周りが行動するよりも先にロクサスを突き飛ばせば、直ぐ様回廊を閉じる。
転げたロクサスはオレの思惑に気付き、起き上がって抜け出そうとするが、その前に回廊は消えた。
「ロクサスはいいだろう」
「あー、しまった1人減ったな……まあ、いいか」
オレも早急に脱出しなければならないな。この幻影旅団とやらから。
言動とは裏腹に、無機質な表情を浮かべる其奴にオレは歯を食いしばった。
「俺の名前はクロロ=ルシルフル。 幻影旅団の団長だ。
A、よろしくな」
静かに睨みを利かせるオレに、其奴はもう一度笑った。
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作者名:レフト | 作成日時:2017年5月27日 19時