16日目 ページ18
隠し扉を潜り、降りた目の前にいたのはあの道化師。
「……」
何も言わずに立ち上がれば、直ぐ様回廊を開こうとする。
「その手はもう食わない♧」
「っ！ 離せ……！」
……が、しかしそれを上回る速さで此方の腕を掴んできた。流石にこの狭い空間で逃げられはしない様だ。
それでも掴んでいる手を振り解こうとするが……
「今度こそは逃さないよ♢」
「ぐッ……！」
逆に、掴んだ腕からギチギチと骨を折られる寸前まで力を込められ、流石の痛みに顔を顰めた。
すると、其奴はオレの腕を掴んだままで……オレの被っているフードを取り外す。
じろじろと姿を見られる気分は、あまりよろしく無いものだ。
「……良いね♡ あの時は見そびれちゃったけど、キミも十分合格だよ♤」
「……黙れ」
このまま攻撃しても腕を折られるのは明白だ。
だから、その代わりに其奴をキッと睨むが、其奴は唯々ニヤつく口元を隠さなかった。
「ああ、良いよ……♢ その反抗的な目！
……まあ、睨んでいる割には殺気が無いけど♧
そんな優しいキミは一体何者なのかな♤」
その白い顔を近づけては、其奴はオレに問う。
この世界の調査の命令を受けている、だとか、殺気が無いのはオレがノーバディだからだ……なんて言える筈がない。
「……答える義務は無い」
結論からそう答えれば、其奴は「そっか」と言い素直に手を離す。
そして、警戒するオレに笑顔を作っては告げた。
「安心してよ……♡ ボクはキミを殺す気なんて無いからさ♤
ボクの名前はヒソカだ♢
ここの試験では一緒に行く事になるし、キミの名前も教えてくれないかな♤」
……そうだった。 今は試験の最中だ。
その上、運悪く此奴と同行しなくてはならない状況となってしまったと言う事だ。
その事実に頭を抱えたくもなるが、こうなってしまっては仕方がなかった。
「……その位なら良い。
オレはA。言っておくが、貴様と協力するのはこの試験だけだ」
「はいはい♧」
奴の適当な返事に顔を顰めつつ、オレは置いていくつもりで足早にその先へと進みだす。
しかし、オレの歩幅が小さいからか特に苦もなくついてくる其奴に、更に苛つきに似たものを感じた。
そうして、オレと道化師……ヒソカは塔の攻略を始めたのだった。
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作者名：レフト | 作成日時：2017年5月27日 19時
