2話 ページ4
何だかんだで、他の従業員よりも遥かに手際の良い双子は、僕が平げた料理の皿を颯爽と片付けてしまっている。
僕が既に口にした料理の数々を挙げ連ねてみれば、目の前の男は思わず顔を顰めた。
「そんなに食べてたんですか、貴方……。ちゃんと自分で自制してくださいよ。どうせ、僕があれこれ口出しするより、貴方がいらないと言った方が聞くに決まってるんですから」
「いや、僕も大丈夫だとは言ってんだけどね。何でか分からないけど、フロイドもジェイドも妙に機嫌がいいみたいで、全然聞いてくんない」
「────ああ、なるほど。寧ろ、貴方だからということですか。僕としたことが、安易に許可するものではないですね……失敗しました」
「は？何の話？」
一人ため息をつき、何かを納得するように項垂れる彼を見ても、僕にはさっぱり意味が分からない。
あえて不満そうに彼を睨みつけてみても、こちらの質問に答えてくれる様子は一向に無かった。
「あれぇ、Aと何話してんの？アズール」
「いえ、別に何も。ただ顔を見かけたので、挨拶させていただいただけですよ。それよりフロイド、貴方は無闇矢鱈に料理を運びすぎです。彼のことも少しは考えてあげなさい」
「え〜、いいじゃん別にさぁ。ジェイドだって喜んで作ってんだし」
「だから余計に厄介だって言ってるんですよ……」
やれやれと頭を抱えながら、彼は去っていった。
一応の念押しで、程々にするようにと言ってはいたものの、肝心のフロイドは聞き入れる様子が全く無い。
(これはもう、何を言っても無駄だな)
あれこれ口にするより、さっさと食べて帰るのが一番得策だと悟った僕は、出された料理を黙々と平らげた。
その様子を彼は、何故かニコニコと笑顔で見つめている。
「……どうしたの、フロイド」
「ねぇ、オレらが作った料理、美味い？」
「え、うん。……美味いけど」
どれがフロイドのもので、どれがジェイドのものか、僕には区別が付かないけれど。
ジェイドはともかく、フロイドにもちゃんと料理の才があるのだと驚く程度には、二人の料理は美味しかった。
「あは、褒められた。オレ達、できる男でしょぉ？」
何かを含んだように、フロイドは妖しく笑った。
────この時僕は初めて、彼らがアズールに申し出たその真意を、ようやく理解したのだ。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
