13話 ページ15
紆余曲折あったけれど、メニュー候補の料理は無事に完成した。
とある人物の好みをこれでもかと詰め込んだ代物も紛れているが、敢えて口にはしない。経緯は勿論、とある人物が誰であるかも。
「A〜。そろそろ小エビちゃんが来る時間だけど、ホール出るの？」
「いや、僕はパス。厨房で洗い物とかしとくから、そっちは任せた」
「オッケー、りょうか〜い」
特に引き留めることもなく、フロイドは厨房を去っていく。
その後を追うようにして、ジェイドも服装を整えに出て行った。
ちらりとホールを覗くと、わずかにだが、アズールがそわそわとしているのが見えた。
(あれで何とも思ってませんとか、無理がある話だよな……)
アズールは、恥ずかしさ故か何かとごまかそうとするけれど、この調子では周囲にバレるのも時間の問題なのではないかと思う。
あれでは、ジェイドとフロイドが面白がるのも当然だ。
僕個人としては、単純に応援してあげたい気持ちでいるけれど、二人が同じ思いでいるかは微妙な所である。
応援するにしても、確実にからかいながら手助けすることだろう。
(それにしても、あのアズールもついに初恋かぁ)
直接的な関わりは無かったが、僕はアズールの小さい頃を知っている。
周りの人魚達に馬鹿にされて、頼る相手もなく一人でいたあのアズールが、自ら相手に寄り添おうとしている。
昔からのコンプレックスが無くなった訳ではないけれど、それなりに心の変化はあったようだ。
それは、あの監督生が相手だったからこそ得られたものであり、僕や双子達では与えてあげられなかったものだ。
人それぞれできることは違うのだから、それに対して思うところはないけれど、少しでもいい方向に転がるのなら良かったとは思う。
「モストロ・ラウンジへようこそ、ユウさん。本日は試食会にお付き合いいただき、ありがとうございます」
「こんにちは、アズール先輩！こちらこそ、招待してくれてありがとうございます。すごく楽しみにしてました！」
時間になり、ラウンジへと訪れた監督生を、アズールが優しく迎え入れる。
その声色は、心做しかいつもより柔らかい。
(……今日くらいは、ホールに出ても良かったかもな)
自分の世界を広げたいとは思わない。
────ただ、彼を見守るくらいの優しさは持ってもいいと思った。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
