プロローグ ページ2
きっかけは些細なことだった。
「最近、監督生ちゃんと仲良いね、皆」
仕事終わりのモストロ・ラウンジで何気なく発したこの言葉が、後々自分の首を締めることになるなど、果たして誰が想像できただろうか。
僕は昔から、自分に対する評価は間違いなく把握できていると信じていたが───実際のところ、全くそんなことは無かったのである。
「……そういう貴方は、最近いつにも増して見かけませんが、一体何処にいらっしゃるんです？」
「そうだよA〜、全然会えねえからつまんねえんだけど〜！」
「いや、僕はいつも通りだから。君らが揃いも揃って、監督生ちゃんの問題に首突っ込んでるから、会う暇が無いだけでしょ」
この学園に彗星の如く現れた異端児は、あらゆる所で面倒ごとに巻き込まれているらしく、ここオクタヴィネル寮で一時期起きていた問題の当事者でもあった。
その流れもあってか、アズールは特に彼女のことを気に入ったらしいが、それは僕の知る所ではない。
「別に、この学校に来てからは大して絡んでないんだから、今更騒ぐことでもないじゃんか」
「何、A。オレ達のこと嫌いになったの？」
「いや全然。そういう話じゃなくて。二人の興味関心が別の所に逸れただけで、変わったのは僕じゃないってこと」
普段から僕は、彼らに必要以上に話しかけたことはない。
遊びに誘うのも、探して回るのも、全部僕じゃなくて向こうがすること。それは、昔からそうだった。
僕はあくまで、双子の玩具だ。
求められた時にだけ、気休めの娯楽を与えるだけの存在でしかない。
飽きて捨てられれば、それでもう僕達の関係はお終いだ。
───そして、その時は刻一刻と迫っているのだと、この時の自分は漠然と考えていた。
「つまり、僕達が貴方から離れたとしても、それをどうにかするつもりはないということですか」
「……え？」
途端に、辺りの空気が凍りつく。
「何それぇ。本気でそんなこと思ってんの？───締められたいわけ？」
「え……え？」
身の毛もよだつような、得も言われぬ顔。
光を映さぬその瞳は、己の予想を容赦無く裏切ってくる。
確実に、僕は選択を間違えた。
(何を、何処で間違えた……？)
僕が離れていくことを、二人は許していない。
そんなのまるで、自分は特別だと言われているかのようで。
僕は初めから、自分の立ち位置を根本的に間違えていたのだと、思い知らされることとなる。
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藤川秋(プロフ) - ララーサさん» ララーサさん、はじめまして。ご指摘ありがとうございます！確認したところ、確かにフロイドの方が正解でした。完全に見逃してたのでありがたいです。感想もありがとうございます、とても励みになります！ (2020年11月23日 21時) (
レス) id: 93e3af9b0c (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - ↓の9話です！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
ララーサ - 僕の勘違いだったやごめんなさい。主人公とジェイドくんのやり取りで、「僕とジェイドが?」という所「僕とフロイドが？」だと思います。間違っていたらごめんなさい！あと、この物語とても面白いです！頑張ってください！ (2020年11月23日 18時) (レス) id: 60e0ce23dd (このIDを非表示/違反報告)
藤川秋(プロフ) - イルカの生姜焼きさん» イルカの生姜焼きさん、初めまして。主人公は基本的に、いい子ではなく、少し人間味の欠けた人物に敢えてしようと思っていましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです！素敵なコメントと応援をありがとうございます。 (2020年6月14日 14時) (レス) id: d1eae4f705 (このIDを非表示/違反報告)
イルカの生姜焼き(プロフ) - 18話の一番最後で主人公の"興味がないことだ"に対して凄いヴィランぽいっと思いました。上から目線になってしまいすみませんがこれからも頑張って下さい。 (2020年6月14日 11時) (レス) id: ca6db90150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤川秋 | 作成日時：2020年5月26日 15時
