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どこにも、

卑猥な言葉など、見当たらへん。


『二人きりで、
ゆらゆらと川面を揺れる船に乗り、

この手を、愛しい方の、広い肩に』

その様を思い浮かべるだけで、頬が熱くなる。


この唄のように、
大毅さんと恋心を交わすことが叶うなら・・・

他には何もいらんとさえ思う。


淡い恋心など、
諦める心つもりは出来ておったはずやのに。


汽車の中で触れた大毅さんの手のぬくもり、
触れ合う幸せをを知ってしまった後ではもう、

私には、大毅さん以外の方は、
考えられへんなってしもた。


「とも、風磨さんに、
是非、お前の点てたお茶でも、
召し上がって頂きなさい」


お父様があまりに勧めるから、
菊池様と二人きりで、

広間の続きにある茶室で、
お茶を点てることになってしまった。


座敷に、
正座をなさってるお姿は、

先ほど、お父様がおっしやった通りに、
ご立派な佇まいでいらっしゃる。


「お点前、頂戴いたします」


菊池様が、お茶碗を手に取られる。

男の方やのに、華族のお方やからやろうか。

お茶のお作法もご存知のようや。


結婚の話は、
なんとしてもお断りしたい。


窓の外に、雪がちらついてきて、
修太郎のはしゃぐ姿が映ってる。


「雪が降ってきましたね。
可愛いらしい男の子。
あの子が、弟さんの、修太郎さんですか?」


菊池様が、窓の外をご覧になって、微笑まれた。


「はい。
寒いやろうに、あんな薄着で・・・」


下男の俊二くんには、
そんなところまで気が回らんのや。


私がちゃんと見ておいてあげんと。


うちの大切な跡取りは修太郎しかおらんのやからと、

絶対に肺病などで亡くしてはならんと、

お父様は、とても神経質になってはる。


私が腰を浮かせるよりも前に、

菊池様の方が立ち上がられた。


窓を開いて、


「修太郎くん!」


そう大きな声でお呼びになる。

窓から、冷たい風がひゅうっと吹き込んだ。


冬の日暮れは、急激に訪れる。


「風邪をひくといけないから、
そろそろ戻っておいで。
落雁でもどう?
一緒に食べないか」


綺麗な関東訛り。

聞き慣れへん言葉に、
少し落ち着かへんような、
そわそわした心持ちになる。

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水無月こすも(プロフ) - きゃぁぁぁ赤さんきゅんきゅんですぅぅぅ🥺🥺🥺早く結ばれてほしい、けど許嫁が、、、😢ドキドキきゅんきゅんです、はわわ、、、 (2022年4月1日 20時) (レス) @page31 id: c7a7f3b3ba (このIDを非表示/違反報告)
水無月こすも(プロフ) - 毎回foolさんの書く文章の綺麗さに感激してます、設定が高い身分だからだと思うんですけど、いつも素敵な文章書かれるなぁと惚れ惚れしてます〜😌とうとう緑さん女の子!(笑)可愛いからアリです🙆🏻‍♀️続き楽しみにしてます! (2022年3月29日 12時) (レス) @page11 id: c7a7f3b3ba (このIDを非表示/違反報告)
このみ - 重岡 (2022年3月28日 17時) (レス) @page2 id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
こっこ(プロフ) - 女体化のお話が密かに好きなので更新楽しみにしています!!智花ちゃんの可愛さが容易に想像できます。赤くんの女の子のお話もいつか見てみたいかもです(笑) (2022年3月28日 1時) (レス) id: a4b13bf62f (このIDを非表示/違反報告)
みさき(プロフ) - 更新ありがとうございます!緑くんの女の子すぐ想像出来ました笑また楽しみができました!よろしくお願いします! (2022年3月27日 22時) (レス) @page5 id: 06114767fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool | 作成日時:2022年3月27日 20時

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