君の妹を信じよう. ページ4
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「お館様...証明してみせますよ、俺が。
鬼という生き物の醜さを!!」
そう言うと、不死川は手元にある箱に自身の刀を刺し、そして自身の腕を斬りつけ血を箱に空いた穴へ垂らした。うわ痛そう、何やってんだあいつ。
「不死川、日なたでは駄目だ
日陰にゆかねば鬼は出てこない」
「ああ、あれ鬼が入ってんのね」
「お館様 失礼仕る」
「ッ禰豆子!!
やめろーーーーーーーッ!!!」
悲痛な叫びに目もくれず、不死川は屋敷の奥へと飛び、箱の扉を開ける。
俺の隣に倒れている少年はゆこうとするが、伊黒が抑えて身動きが取れなくなっていた。
「...今すごい音したけど。少年怪我してるんじゃ?あんま押さえ付けると痛いだろ、程々にしてやれ」
「貴様に言われる筋合いはない」
「...やっぱお前合わんわ」
「奇遇だな、俺もだ」
どうにもこうにも、伊黒とは昔から喧嘩腰だった。なぜかは俺にも分からない。
ふと屋敷の奥の方へ視線を戻すと、そこには箱から出てきた子が立っていた。暗くてよく見えないが、そこからはれっきとした鬼の気配があった。
「伊黒さん、強く抑えすぎです。少し弛めて下さい」
「動こうととするから抑えているだけだが?」
「...竈門君、肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと血管が破裂しますよ」
「けけけけ血管が破裂!?そいつァ大変だ、伊黒今すぐその腕をどけろさもなくば折る!!」
「貴様、なん...」
「ゥウウウ...ガアアア!!!!」
「!やめろ少年、落ちつ」
「竈門君!」
少年は自力で縄をちぎり、己の妹の方へゆこうとする。俺は彼の腕を咄嗟に掴んだ。
「ッ離してください!
禰豆子がッ...俺の妹が今!!」
「君が今向こうへ向かえば、彼女の努力は全部水の泡になってしまうよ。助けるだけじゃない、見守ることも兄の役目さ。兄妹なら自分の妹を信じようや。」
「...禰豆子...!」
少年は悔しそうな、懇願するような表情で妹の方を見つめる。
こうなるのも無理はないだろうなあ。
家族はいなくなり。唯一生き残った妹は鬼になり。
何事もなく、普通に...とは言えないけれど、これまで生きてこられた俺は恵まれていた方なのだろうか、とも思う。
兄妹、か。
俺には兄も弟も、姉も妹もいなかったから。
少しそういうのは羨ましく見えたりもする。憧れに近いような感情がある。
俺の家系は代々、鬼狩りの家系だった。
跡継ぎは男の役目だった。
でも、母さんと父さんのあいだに生まれた俺の性は女。男は生まれてこなかった。
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作者名:たらんら | 作成日時:2019年10月7日 23時