うつくしい人の憂鬱

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「行ってこいよ、台湾」

「え？」





Aと会ってから、なんとなくそれは許せるようになっていざハナと会って一番にそれを言う。

目の前のネ ヨジャは、元々でかい目をさらに大きく開いている。


「ど…どうしたの？ヒチョラ」
「うっせー、俺はほんとは懐の深い男なんだよ！」
「うそだ〜」
「お前、口塞ぐぞ」


なんて言いながらも、嬉しそうなハナ。

この顔を見れたなら、これでよかったのかもしれない、とか思ったりもして。









あの日、

Aのカフェから朝帰りした日。



結局リョウクとはあれからも気まずいけど、あの時はとりあえずキュヒョナが場を納めてくれた。

たぶん、あの後すぐリョウクの携帯にはAから連絡があったと思う。

なんでかって？
すっげーにやけてんの隠しながら出かけてったから(笑)

そういうとこ可愛いんだよ、俺の弟(笑)


とかいって。
ほんとはなんかしっくりこねーまま見送ったんだけど。



俺のコンジュニムが、他のやつと仲良くしてるって考えると、俺の中のもう一人の俺が騒ぎ始める。


盗られる、って

俺の、コンジュニムが、って


でも、まともな俺がそれを止める。

俺のでもなんでもないし、誰と仲良くしようが勝手だって。


だって、あいつはネ ヨジャじゃない。






キュヒョナに、俺はこう聞いた。


【なあ、愛ってなんだ？】


ハナが俺に言う、愛してるって。
でも、俺は思い返すと今まであいつに愛してるって言ったことはない、と思う。

我ながら気持ち悪い質問だけど、俺はこれのせいですっきりしない毎日を過ごしてた。


【なにかっこつけてんですか、ヒョン】
【真面目に答えろ】
【うーーーーん………………自己犠牲？ですかね？】
【自己、犠牲？】
【俺は、大切だからこそより幸せになれるように手を貸すことが、愛、だと思いますけど】
【自分が損してもか？】
【はい。自分が損しても、大切な人が幸せになればそれでいい。自己犠牲、です】


キュヒョナは、真っ直ぐな眼差しでそう答えた。

自己犠牲＝愛

だとしたら、俺はハナを愛せてないってことか。


なんとなく、納得がいって。
けど、これですっきりしていいのか？とも思って。








俺にとっての愛は、互いが尽くし合うことだ。

側にいて、支えて、何よりも自分たちのこと。
一心同体でこそ、愛だと思う。

そうだとしたら、俺はハナを愛せてる。



そう、思った。







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