何故だろう ページ9
「やっぱり驚くんだ」
「いや、そりゃ……」
美風君は何喰わぬ顔で顔を離すと、私の腕をがっしりと掴んだ。
振りほどく暇もなくずかずかと引っ張られる。
元々抵抗する気もなかったが、なんだか強引にされるとどうにも不安が募って。
これから何されるんだろう。
どこに連れていかれるんだろう。
けれど聞けなかった。
「……キミさ」
ふと足を止めて、私は美風さんの背中に衝突した。
うぶっと女子らしからぬ声が毀れる。
「警戒心ないの？」
空いた手で額を抑えながら顔を持ち上げると、不思議そうな美風君の目と目が合った。
どういうことだろう、一瞬そんな考えが横切ったが、私はただただ黙っていた。
「……質問を変えよう」
そう言うと、改めて私を見つめた。
「ボクが、怖い？」
息の吸い方も忘れた状況の中、私には美風君しか見えていなかった。
雑音も聞こえないくらい、その瞳に見惚れていて。私は静かに首を振った。
「……ありがとう」
何に対してのありがとうだろうか。
それを聞く前に、美風君は私に背中を向けてしまって。
けれど掴む腕は、先ほどよりしっかりと握られていた。
なんでだろう、なんだか安心に似た感情が胸の中を支配する。
不思議だ。
今日の夕焼けは、どこか綺麗だった。
＊＊
そうして連れてこられたのは、どこから情報を得たのか私の家だった。
まるで自分の家かと思うほどナチュラルに鍵を開けて躊躇なく侵入してくる。
不法侵入ですよ！と注意するタイミングもないくらい、手順に迷いが無い。
「なんでって顔してるね」
いや当たり前だから。
当然のように家のソファ座られて優雅に足組まれて、動揺しないわけがない。
でも足長い……。
「いいよ、教えてあげる」
美風君は小さく口元に笑みを張り付けた。
そうして、非現実的で頷きがたい、衝撃事実を私に伝えた。
「ボクはこの世界に呼ばれたみたいなんだ」
「……はい？」
思わず聞き返してしまう。
当然だ、どういうことだよ。
その表情を悟ったのか、面倒くさそうに美風君は話し始めた。
つまり、私の責任ということだけは、なんとなく予想はついている。
きっと考えていることも、当たっているだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい！！ (2016年3月13日 10時) (
レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます！これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね！これからも頑張ってください！楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください！陰ながら応援してます！ (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます！なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：稲葉ふゆき | 作成日時：2015年4月3日 1時
