笑顔の裏 ページ7
だから言葉は苦手だ。
口からは何とでもいえる、嘘も、真実も。
でも、相手に伝える手段は言葉しかない。
だから私のようなコミュニケーションを苦手とする部類はクラスから浮くことが多い。
そんな私はいい例だ、緊張して何も話せなくなってしまう。
でも、なおせないわけじゃない。
まだ見込みはあるのは確かなのだ。
でも、確実じゃない。
ただでさえ臆病な私には随分なハードルの高さである。
諦めきれるわけじゃないけど、この地獄から脱獄できるわけでもない。
そんな曖昧な状況で、どう頑張ればいいのか。
けれど、そんな私を救ってくれたのは紛れもない彼だった。
美風藍、シャイニング事務所のアイドル。
私は作曲家である七海春歌として、彼と出会った。
もちろん、夢物語だ。
幸せだった。
どんな困難も、悲しみも、二人で乗り越えられた。
それには勇気と、覚悟があったから。
芯を持ち合わせた春歌ちゃんだからこそ、彼は惹かれたのだ。理由なんてない、好きになったから。
羨ましいと思う。
春歌ちゃんは私にはないもの全て持ってる。それは大切で、かけがえのないもの。
憧れだった、夢だった。
でも現実はこうだ。
うじうじして自分でもうざったい。
いっそ自分なんてぶん殴ってやりたいくらいだ。
もし、私が春歌ちゃんだったらなんて。
そんな願望があるから、切ないのだ。苦しいのだ。
でも、いつだって私を連れ出してくれるのは彼一人。
「……性格悪いね、キミ」
ぼそりと呟いた声は、よく聞こえた。
騒然とした教室は水を切ったようにしん、と静まり返った。
そうだろう、私だってビックリだ。
彼の声とは思えない声音に、思わず私も顔を持ち上げてしまった。
血の気の引いたような青ざめた顔をする生徒がちらほら見える。
そんな生徒を一瞥して、美風君の形の良い唇は弧を描いた。
「どうしたの？」
にこやかに微笑んでみせると、あたりの緊張感は嘘のように吹っ飛んだ。
安堵して顔をほころばせる人もいれば、顔色を変えて教室をぱたぱたと飛び出していく人たちがいる。
その後ろ姿は紛れもなく私の悪口を言いあっていた女子生徒だった。
「……」
私はぽかん、とあっけにとられた。
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有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい！！ (2016年3月13日 10時) (
レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます！これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね！これからも頑張ってください！楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください！陰ながら応援してます！ (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます！なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稲葉ふゆき | 作成日時：2015年4月3日 1時
