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言葉 ページ6

「……」


 おかしいよ。
 こんなのおかしい。

 ただの偶然だとしても、美風君が私の隣を指名したこと。
 印象良くするためだろうけど、私に微笑したこと。
 最後に、謎をメモを私に渡したこと。


 なんだこの展開。

 今時の乙女ゲームでもないぞ。


 とりあえずメモを握りしめて私も前を向いた。
 多分、平然を装いきれてないと思う。だってほら、嫌な汗だらだらだもん。

 先生の話なんて聞き流すというよりは弾き返す勢いで混乱していた。

 このメモは見るべきだよね……でも、でも。


 そうしているうちにホームルームは終わりを告げ、チャイムが鳴る。

 一気に弛緩した空気につられて私も気が抜けて、へなへなと机にひれ伏っしてしまった。
 なんかいろいろありすぎだよ、今日。


 ため息をついていると、不意に隣の会話が耳に入ってきた。

 そんなつもりはなかったけど聞き耳を立ててしまう。多分それも悪い癖。



「藍君ってかっこいいね」
「どこかのハーフ?日本語ぺらぺらなんだ!」
「意外と身長高ーい!」


 女子の群だ。
 多分美風君に興味があって近づいてきた典型的なミーハーだろう。
 分かる気がする、私だってこんな人現実にいるんだって驚いたほどだし。モデルさんでも滅多にいないよ。


 でもなんでうたプリに触れないんだろう、皆。
 昨日なんて騒がしいくらいだったのに。

 ぼんやりと考えている内に、話しの話題はどんどんずれていく。

 そしてついに、やってきた。


「苗字さん、怖くね?」
「わかるぅー、いつも顔怖いし」


 ひそひそと話す女子。
 しかも美風君の真ん前で。

 私に聞こえるんだからきっと美風君にも聞こえてるだろう、あぁほんとやだ。
 これで悪いイメージつけられるのは確定、かな。

 なんだろう、すごく痛い。

 涙は出てこないのに、すごく痛い。


 もどかしい。
 晴らしたいのにその余地が無い。


「……」

 でも、美風君の声は聞こえてこなかった。

 うつぶせた真っ暗な視界では、どんな顔をしているのかは分からない。
 でも、どんどん女子の声は大きくなっていく。

 それは私への挑発、バカにしたいだけ。

 適当に理由つけて、仲間つけて、省けば満足する。



(でも、私も悪い)


 解決しようという意気込みがなかった。できなかった。

 言葉は苦手だ。
 武器でもありながら、凶器にもなる。

笑顔の裏→←ネガティブ



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有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい!! (2016年3月13日 10時) (レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます!これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね!これからも頑張ってください!楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください!陰ながら応援してます! (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます!なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:稲葉ふゆき | 作成日時:2015年4月3日 1時

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