ネガティブ ページ5
足音が近くで止まった。
それは美風君のものだという確信はあって。
「よろしく、ナマエ」
と、抑揚のない透き通った声が。
真っ暗な視界の中、ノイズしか聞こえない耳に不思議なほど届いた。
「……うん。よろしく」
なんだろう、複雑だ。
アニメで聞く"ハルカ"とは違う響き。
まるで胸を溶かすような、恐怖を解すようなそんな声に。言葉に。
――確かに私は安心したんだ。
暖かい、初めてそう感じた。
(不思議……)
さっきまでの恐怖が、不安が、嘘みたい。
自然と持ち上がった視界に映るのは、優しく微笑んだ美風君。
だめ、そう自分が囁いた気がした。
あれは全部偽りなの。仮面なの。
これは彼の本心じゃなくて、偽装でしかない。そうなのに。
騙されてみたいと思った。
馬鹿だ、気を許しちゃだめだ。
どうしよう、どうすればいいんだろう。
疑心暗鬼なんていつものことなのに、だったらこの動揺は何？
めちゃくちゃになった頭の中は正しい判断が下せずにいる。
昔からの癖で俯くと、隣で美風君が席についた気配がした。
「……ホームルーム続けるぞー」
先生の声に、私は慌てて頭を切り替えた。
授業に集中だ。今は学校。
けれど隣が気になって仕方なかった。
どう思われてるんだろう、ここはうたプリの世界じゃない。
私は、彼にとって外野でしかないのかな。やっぱり。
なんでこうマイナス面にはぐるぐる思考は回るんだろう。
疑問だ。欠点ばかり目につくのに、良いところは見えて来やしない。
(私ってだめだなぁ……)
思わずため息をついたその時。
隣から肩を叩かれて、反射的に振り向いた。そう、美風君のほうに。
「っ……！」
「はい」
無意識に縮こまった体に嫌な顔一つせず、むしろふんわりとした笑顔でメモを差し出してくる美風君。
突然のことに目を開き呆気にとられていると、強引に胸元に閉じられていた腕を引っ張られて掌に紙を乗せられた。
そのまま包み込むように手を握られて、息を飲む。
「ちゃんと見て」
私にしか聞こえないくらいの声音でそう言って、何もなかったかのように前に向き直った。
多分、今の私の顔はみっともないと思う。
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有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい！！ (2016年3月13日 10時) (
レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます！これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね！これからも頑張ってください！楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください！陰ながら応援してます！ (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます！なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稲葉ふゆき | 作成日時：2015年4月3日 1時
