ノイズを切り裂く声 ページ4
真っ青になって頭を抑える私に、どういう吹き回しか円満な微笑みをかける美風君。
傍から見ればその笑顔は、綺麗で、年相応に無邪気で、思わず歓声を上げてしまいそうなくらい、可愛い笑顔である。
でも、私からしてみれば何か悪巧みをした裏のある笑みにしか見えない。
いや、見えざるおえないのだ。
美風君がどういうつもりか分からないけど、これはまずい。
困った顔で頭をかく先生は美風君にまっすぐに見つめられて、このままじゃ先生から折れそうだ。
美風君はあと一押しというように、「先生?」と純粋無垢な面持ちで声をかける。
……名乗り出れない性格がもどかしい。
あぁ、もうやめてあげて美風君!
なんかこっちが申し訳なくなってくるよ!
でもここででしゃばったりなんかすれば悪目立ち間違いなしだ。
ただでさえ、今の立場でもアウトなのに、これ以上落とされたらたまったもんじゃないよ。
とりあえず、彼のことは距離を置いてからだ。
まずは守備体制に切り替えて……。と悶々としていると同時に、先生はため息をついた。
それはまるで諦めたかのように。重く、意味深に。
そして嫌な予感は、当たりをつく。
「そこまで言うなら仕方ないな」
そこで決定な。
そう言った先生に、クラス中が騒然にブーイングの嵐。
これはすごい、いつにもなく一致団結して望ましいクラスだ。
けれどその怒りの矛先が、私に向くのも十分分かってる。
むしろそういうのならもう慣れた。
耳を劈くような声に、私は耳を塞いで。
目も伏せて、口も噤んで、歯を食いしばって耐える。
私は今、何も聞こえない。見えない。感じない。
自分を言い聞かせるのは簡単だ。でも。
現実から目を背けるのは、難しい。
だから嫌だったんだ。なんで、なんで。
こんな姿を好きなキャラクターに見られたくなかった。なのになんで。
素直で可愛い"七海春歌"のまま、私を映してほしかった。なのになんで。
君は私の前に現れるの?
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有栖(プロフ) - 更新、頑張って下さい!! (2016年3月13日 10時) (レス) id: d04813d339 (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - 遅れてすみません。コメントありがとうございます!これからもこの作品をよろしくお願いします (2016年1月9日 23時) (レス) id: 3715ce0b63 (このIDを非表示/違反報告)
美風りつか - とても面白いですね!これからも頑張ってください!楽しみにしています(*^^*) (2015年9月3日 1時) (レス) id: 1f55841bfd (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 久しぶりに来てみたら少し更新されてて、飛び上がって喜びました笑。これからも頑張ってください!陰ながら応援してます! (2015年7月20日 1時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
稲葉ふゆき(プロフ) - みーちゃんさん» ありがとうございます!なんというか、書きやすいんですよね(笑) 最近更新低下していてすみません……。以後、気を付けます。 (2015年7月17日 15時) (レス) id: b109ce92e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:稲葉ふゆき | 作成日時:2015年4月3日 1時