神様からのおくりもの【美風藍】

嫌な予感 ページ3

とりあえずもっさりとした髪で顔を隠した。


(やばいやばいやばい)


　そんな焦る必要もないのは分かるけど、誰か私の心境を察してくれる人はいないだろうか。


　……まて、その前に状況を確認しよう。

　突然美風藍激似のイケメンが転入してきて。
　いや、ちょっと待て。そこからおかしい。

　まずこの現実にあんな髪してる人いる？マリンブルーだよ？
　学校にあんなお洒落した髪の人初めてみました。


　ていうかなんで皆そんな冷静なの？つっこまないの？馬鹿なの？
　確かにイケメンだと思うけど女子もそんな分かりやすく目とかハートにしないでよ！まず疑って！


「席は……」

　先生もナチュラルに進めないでください。
　頭を抱える私を置いてきぼりに、ホームルームはどんどん進む。


「山田の隣な」
「嫌です」


　そうして美風君は笑顔で爆弾を落とす。

　……ん？
　まて、今なんて言った？


「嫌です」


　もう一度言わなくていいから！

　その天使のような笑顔と裏腹に、口から紡ぐ言葉はあまりにもきつい。
　思わず山田さんの方を見れば、放心していた。静かに涙を流しながら。

　これ犠牲者多いぞ……。


「そ、そうか……」

　先生も戸惑ってるよ！困らせないであげて美風君！

　そんな私の儚き願いも虚しく、美風君は意見を曲げることはなかった。



(美風藍だあれ……美風藍、本人)


　さきほど偽物とか美風藍激似とか言ってたけどこれは訂正しよう。

　あれは完全、本物、100％の美風藍。
　うたの☆プリンスさまっ♪の攻略キャラクター、美風藍である。


　パニック状態で訳の分からない冷や汗を流す私に、再び彼の視線が向いた。

　そして意味深に、見ようによっては恐ろしいほど、天真爛漫な微笑みを浮かべた。


「っ……！！」

　ぞわ、と全身を駆け巡るような寒気に鳥肌が立つ。

　多分今の私は真っ青だろう。
　だって今、息すらできてないですし。


　何事もなければいいけど。

　これまた儚き願い。けれどそれは美風藍の一言によって、全てぶち壊されることとなった。


　またにこりと笑った美風君が、先生に笑いかける。
　一瞬のことなのに、私の目には彼の動作がゆっくりと感じられた。その指先が、何故か私の方に。

　正式には、私の隣の席に。


　じくじくと感じていた嫌な予感は、


「ボク、あの席がいいです」


　……このことだったのか。



(いやぁああ……っ！)

　心の中で、私の悲痛な叫びが響き渡った。

ノイズを切り裂く声→←転入生？

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す