【 sxpx BL 】曲 パ ロ 短 編 集 .

花びら【橙×紫】 ページ44

.

お久しぶりです。

リクエストありがとうございます(感動中)

※死ネタ注意です
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿

　

紫 side

　

「あぁ、久しぶりだな……」


俺はそんなことを呟き、空を仰いだ

頬に花びらが触れ、はらりと落ちていく


その花びらを目で追うと、真っ黒な服とは合わない赤いサンダルが映る


「今日はいい天気だな〜」


笑顔で言った言葉は、誰に拾われるわけでもなく、春の風に消えていく

　

毎回のように足止めをする踏み切りの音。

見上げると瞳を奪われる美しい桜。


なにも変わらないはずなのに、その景色は心を抉り大きな傷をつくる

　

『ここは毎年綺麗な桜が咲くんやで！』

『へぇ、そうなんだ！』


「……そういえば、あなたから聞いていた」


来る予定なんて全く無かったのに、来てしまえばもう虜だ

　


だけど、人々はそんな桜に目も暮れず、下を向いて歩いていく


ねぇなんで？

綺麗だよ？

みんな見てよ


その言葉全てを呑み込み、ため息を1つ

　

「……この場所は、汚かったのかな」

　

誰も愛さないはずだったのに、恋したあの日


『っ危な……！』

『え、ちょっ、うわっ』


踏み切りで、死のうとしていたところを彼は助けてくれた


『大丈夫かいな？』

『は、い……』


空に浮かぶ、太陽のような笑顔で。


そのとき、此処には美しい桜が舞っていて。


この思い出がなければ、気にかけることもなかっただろう

今ある感情は全部、彼のおかげなんだ。

　


「……あははっ、花びらが踊ってるみたい」


何度も髪に引っかかる花びらに、俺は笑みを溢す


その花びらを春風に飛ばし、俺自身も身体を動かしてみる

別に踊るのがうまいわけでも、好きなわけでもなかった


ただ、なんとなくだ。


　
花びらを踏みつけながら、足を運ぶ。

サンダルの音を響かせながら、踊る。

桜の下で、春を踊る。


タッタラタ、ラッタッタ

そんなリズムを刻んで。


　


「ねぇ、あなたは来ないの？楽しいよ」


そう声にしても、彼が笑ってこちらに来ることはなかった


「……。」


俺は無言で桜を見上げると、こみあげてきたものをごまかすように笑う


「あははっ、楽しいな！」


君が来るまで俺は、踊り続けるの。

続き→←続き

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す