【skt】とびきりカッコよくします【usss】

25.大まちがい / skt ページ39

　
　
『23時くらいには帰るから』



そうAに告げて家を出たのが20時頃。


そして、現在ーーー日付を跨いで、1時過ぎ。


最初瀬川と2人で飲んでいて、思いの外盛り上がり、途中から瀬川の彼氏も合流して3人で飲んだ。

気づいたら約束の時間は超えていて。その時点ですぐに連絡すべきだったのに、酒の入った脳みそは使い物にならず正しい判断をしなかった。



もう流石に寝てるやろうな。

起きてたら、謝ろう。



Aは普段嫉妬をしない。怒りもしない。あっても、誕生日の時のファンに対する可愛い対抗心くらいで。

もっと甘えてくれていいのに。ヤキモチやいていいのに。
ーーー俺なんか、いつだって余裕なんかないのに。


そう思っている癖に、どこかで俺は今日のことでもAは傷ついたり俺を詰ったりはしないんだろう、と、思い込んでいて。

ーそしてそれは、大きな間違いだったと知る。










家に入ると、リビングの灯りはついていて、Aはソファの上で体操座りする形で小さくなって、膝に顔を埋めていた。




「A…？」

「！」




俺の声にびくりと肩が揺れて、Aはゆっくりと顔を上げた。



ーーー瞬き一つで溢れてしまいそうなほど瞳に涙を溜めた、不安でいっぱいな表情で。



瞬間、一気に酔いが覚める感覚に襲われる。
Aが、泣いている。直感する、俺のせいだ。



さかたさん。

弱々しい声でAが呼ぶ。




「私は、退屈だから、嫌になっちゃいましたか………っ」

「…！？は、」

「瀬川さんとお話しする方が、楽しいですか…？」




私が上手く甘えられないから。

可愛くワガママが言えないから。


ほろほろとAの瞳から涙がこぼれる。




「んなわけ、ないやろ………」




たしかにベタベタ甘えてくるわけじゃないけれど、彼女なりに勇気を出し、恥ずかしさと戦いながら甘えてきてくれていることを知っている。

我儘を言わないのは彼女の性格故で、いつだって2人の希望を選んでいきたいと思ってくれているからだ。

ありのままの彼女で、俺は十分なのに。




「私じゃ役不足だから、"相談"相手にできませんか…」

「、ちゃうって…！」




俺の大声に、Aの肩が跳ねる。
あぁ、違う。俺がAに怒鳴りつける資格なんてない。




なにが"Aは嫉妬しない"だ。

なにが、"傷つかない"だ。




その全ては、俺の仕事や交友関係を尊重してくれる、彼女の健気な優しさで成り立っていたのに。
　
　
　

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