8.彼女の特別 / skt ページ14
「「かんぱーーーい！」」
もう何度目か分からない音頭とともにジョッキを傾ける。
春ツアーのファイナル公演を終え、待ちに待った打ち上げ。
開宴から1時間ほど経ち各々好きに席を移動しだした頃合いを見て、お目当ての姿を探す。
ーーおった。志麻くんと一緒やん。
お酒で少し頬を上気させた佐伯さんを見つける。
会話に混ざろうと近づくと、志麻くんの大きな声が耳に入ってきた。
「え！？佐伯さん彼氏さんと別れとったん？」
「あはは、はい。めっちゃ前ですよ」
「うわ、楽しそうな話してるやん。俺も混ぜて？」
志麻くんと反対側の佐伯さんの隣に陣取る。
彼女はやはり少し酔っている様で、「あ、坂田さんだ。どうぞどうぞ〜」といつもよりゆるゆるとした口調で笑った。
「さかたぁ。佐伯さん今彼氏おらんねんて。めっちゃ前に言うてた人とそのまま続いてるんかと思ってたわ」
確かに、初めて佐伯さんにヘアメイクを頼んだライブの打ち上げで、今付き合ってる人がいると言っていた気がする。
その後何回もこういう席はあったけど、特に恋愛の話はしてこんかったからな。
ー今おらんのか、彼氏。
「別れたのめっちゃ前ってどんくらい？」
「えーと…3年前？くらいですかね」
「まじでめっちゃ前やん！！何で別れてしまったん？」
デリカシーのない質問だとわかりつつ、興味が湧いて聞いてしまう。
佐伯さんは特に気を悪くした様子もなく、振られちゃったんですよー、とヘラリと笑い、理由を話しだした。
土日休みの彼に対し、佐伯さんはツアー期間は1ヶ月以上土日が埋まり、すれ違っていたこと。
休日もヘアメイクの構想を練ったりと、佐伯さん自身仕事のウェイトが上がっていたこと。
「それって、俺たちが佐伯さん指名したのも影響してるんやない…？」
「んー……。確かに、嫌だって言われたことありました。
ーーーけど、聞けなかったんですよね。その要望は」
私の中で優先したいものの順位の一番が、彼の気持ちじゃなくなっちゃったんです。
だから、私の気持ちの問題です。
若干の罪悪感を感じていた俺たちの心情を察したのか、佐伯さんは優しい表情でそう言った。
慈愛に満ちた、ってきっとこういうのを指すんだろう。
「私の中で、皆さんはずっと特別ですよ」
それだけで十分嬉しいはずなのに、
ーー彼女のこの瞳を独り占めできる奴は、どんなに幸せ者か、なんて。
俺はいつからこんなに強欲になったんや。
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打楽器(プロフ) - ちゃかのさん» ありがとう！！！！😂✨最初の作品で思い入れもあるから一層嬉しい〜〜！いつもありがとう！！🥰 (2022年7月6日 10時) (
レス) @page50 id: e8512220c2 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃかの - 101票ー！！！🎉🥳 10.0のままおめでとう殿堂入り！！！ (2022年7月5日 17時) (レス) id: 429671251e (このIDを非表示/違反報告)
打楽器(プロフ) - 茶菓さん» うぐ…っ(嬉)普段優しいのに余裕なくなっちゃうの大好物なんです、文才なんてそんな勿体ないお言葉…！励みになりますもっと番外編も増やせるようにしてきますね！ (2022年5月24日 8時) (レス) @page47 id: 9be83c3a2a (このIDを非表示/違反報告)
茶菓 - …ん"んっ(悶) 余裕なさそうなのめっちゃ書くのうまいですね、文才ください🙃 嫉妬さかたん番外編ありがとうございます！！！ (2022年5月23日 18時) (レス) @page47 id: 68685abacb (このIDを非表示/違反報告)
打楽器(プロフ) - 茶菓さん» わわわありがたいお言葉………！励みになります！お仕事休みの間にたくさん更新しますね！笑ありがとうございます😊 (2022年5月3日 22時) (レス) id: 5b8d76cfc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：打楽器 | 作成日時：2022年4月10日 5時
