五羽 ページ6
一緒に居たい。と願ったもののふと我に返ればすごいお願いをしてしまっているではないか。
やっぱり大丈夫。と言おうか…？
「ええよ。一緒に居ようか」
「え、いいのですか？」
承諾してくれたことが嬉しくてもう一度尋ねると、うん。と微笑んでくれた。
「布団、持ってくるな。」
「わ、わかりました！」
ど、どうしましょう！鬱くんと一緒に居られるなんて！
…鼓動が早くなるのを感じる。
あぁ、早く夜にならないかしら。
ーーー
鬱くんがお布団を持ってきてくれたころ、ご飯にお呼ばれして部屋に向かうと、なぜか東城様がいらっしゃった。
「A！さっきはすまなかったね…。鬱くんにもさっき謝ったんだ。君も許してくれるかい？」
…鬱くんに謝ったの？ほんとうに？
彼を見ると困ったように笑いながらも頷いていた。
「…もう怒ってはいません。それよりも手を離してください。」
正直彼は嫌いだ。でも私の隣に座り、話しかけてくる。
さすがにお父様もお母様も心配そうに私を見る。
「でも嬉しいなぁ。これからは君とずっと一緒に居られるなんて」
「はい？」
「聞いていないのかい？僕たちは婚約するんだよ。」
え？え？この人と？私が？
「と、東城様！そのお話はまだ…！」
「いや、僕は決めたよ。君が好きだ。君を妻にしたい。」
東城様は手を繋いで顔を寄せてくる。
お父様やお母様がお止めくださいと言っているのが聞こえる。
いや、いやだ！助けて！
「……」
鬱くんが私の手を引いて彼との間に入ってくれた。そして私を庇うように立ってくれる。
「な、なんだい鬱くん…」
「……さすがに、女性の手を許可なく触れるのは如何かなと思いましたので。彼女も怖がっている様でしたから。」
「君は一体彼女の何なんだ！！」
「僕は…彼女を大切に思っている。」
大切に…
鬱くんは私の方を見てもう大丈夫。と言うように笑い、お父様を見て。
「ご婚約は彼女の意見を尊重すべきだと思います。」
「う、うむ。そうだな。鬱くんの言う通りだ。」
「な、何故ですか！西園寺さん！私は、私はこんなに想っているのに！」
彼は暴れだし、お父様がそれを押さえ、お手伝いさんも駆け寄り、お母様は警察を呼んでいた。
私は怖くて、小さくなっていた。
「…A、こっちにおいで。」
「うつくん…」
彼が手招きしてくれる方へ行き戸を閉める。その時、私の名前を呼ぶ声が聞こえてきたので聞こえないふりをして鬱くんに抱きついた。
「…怖かった」
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作者名：ほたて | 作成日時：2022年8月25日 22時
