四羽 ページ5
誰…？
とても綺麗な、(鬱くん程じゃないけど)男の人が立っていた。するとその隣からはお父様が青ざめて私を見る。
「これはこれは東城様！お見苦しいところを！」
「お父様、この方は？」
「この方は東城累様だよ。東城様、こちらは娘のAです。」
「君がA！」
すると東城様という方が、私の手を掴んだ。
「A、会いたかった…」
えぇ…。誰？怖い…
助けを求めようとお父様を見るも、にこにこしているばっかり。一体何なのよ…
「ただいま帰りました。」
「おぉ！鬱くんおかえりなさい。」
大好きな人の声が聞こえる。私はその人の手をほどいて、鬱くんに駆け寄った。
「おかえりなさい！」
「ただいま。お嬢様。……そちらは？」
「東城様という方ですよ。それよりも鬱くん！今日もお話を聞かせてください！」
と、鬱くんの手を掴もうとしたその時だった。
「だめですよ。」
「……え？」
東城様が、私の手を引いて抱き寄せてきたのだ。
突然のことに、さすがにお父様も、私も、鬱くんも驚いている。
「Aは今日、私と一緒に居るのですから。」
ね？とこちらを見てにこりと笑う。
「だから、貴方は近寄らないでいただきたい。」
「……」
東城様は、鬱くんを思い切り睨んでいる。
なんでこんなことするのかは分からないけど。
「鬱くんにひどいことしないで！」
私は東城様を睨み付けて思いっきり離れる。そして鬱くんを庇うように立った。
「私は鬱くんと一緒に居たいのです！貴方と一緒にだなんて、勝手に決めないで下さい！」
「…A」
「鬱くん行きましょう！」
「え、あ、あの、お嬢様…」
私は彼の手を引いて私の部屋に入る。彼らは追いかけては来ないらしい。
「…A、大丈夫？」
「…大丈夫。鬱くんは？」
「僕も大丈夫。守ってくれて、ありがとうな。」
そして、僕は守れなくてごめん。と呟く。私は、思い切り鬱くんに抱き付くと、なぜだか涙が溢れた。
「…うぅっ……ふっ…」
「！……A、怖かったよな。怖い思いさせて、ごめんな。」
違う。鬱くんは何も悪くないのに。謝らなくて、いいの。
それを伝えたくて首を横に振るけど、鬱くんは何度もごめん。ごめんな。と、私を撫でてくれた。
ーーー
「落ち着いた？」
「うん。」
私が頷くとやっと微笑んでくれた。
「ねぇ、鬱くん」
「うん？」
「今日は、ずっと一緒に居たい…。」
正直、あの人が怖い。帰った様子もないから、今日はずっと居るのかもやし。
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作者名：ほたて | 作成日時：2022年8月25日 22時
