5時間目 ページ6
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「ここは終止形と助詞の"と"が使われているから、逆説仮定条件になる。」
本文を読み、解説をして、リズムを刻むようにそらる先生が持つチョークが黒板に文字を書いていく。
流暢な話しぶりに生徒は微睡み始める。
古典は特に、そらる先生は力を入れる。覚えることも多く、間違えやすいから、らしい。
「じゃあ…この一節を橋本、現代語訳してくれ」
「えっと…」
棗が立ち上がって、辿々しくも正しく現代語訳を言っていく。最後まで言い終えると、そらる先生は「正解」と笑って棗に着席を促した。
「逆説仮定条件に加えて、高1のときに教えた、"る"と"らる"の意味の識別ができてる。…じゃあ、例題を出すから、わかったら挙手してくれ」
セットしてるのか、それともしていないのか。そんなふわふわとした髪の毛が揺れて、黒板に白い文字が増えていく。
三題ほどの問題を書き終えて、そらる先生は私たちに考える時間をくれる。
(…あ。)
そらる先生は窓枠に後ろ手をついて少しだけ外を仰ぎ見た。
視線の先には綺麗な青空が広がる。そらる先生の横顔は無邪気な少年の影を浮かべて、その目には外と同じ青空が広がっている。
『先生。』
「…っと、何だ?城田。」
『答え、わかりました。』
「早いな。じゃあ、答えてもらおうかな。」
椅子を引いて、黒板の元へ歩みを進める。
いくつも置かれたチョークの中からそらる先生が先ほどまで使っていただろうそれを手にとって、静かに書く。
そらる先生の流れるように書かれた字に比べて、私の字はチョークに慣れていないからか少し角ばっていた。
カタン、とチョークを置いてそらる先生の方を一瞥する。それに気づいた彼方さんは、少し頭を傾けて、黒板を見た。
「よし、正解。」
なぜか嬉しそうなそらる先生を横目に、私は席に着く。
チャイムがまた鳴り響いた。
「あ、もう授業終わりか。…このまま終礼をするから教室出るなよ〜」
クラスメイトは立ち上がってカバンの中へ教科書やノートをしまっていく。
その音に対抗するように大きめの声でそらる先生は連絡事項を伝えていた。
「あ、あと。…城田〜、話があるからこの後残ってくれ。」
喧騒の中、やけにはっきりとその声は耳に届いた。
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (7月24日 3時) (レス) @page8 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
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