4時間目 ページ5
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翌朝。
眠気に負けそうになりながら登校する生徒たちの中で、私もまた眠気に負けそうになっていた。
ローファーを下駄箱に入れて、上履きに履き替える。
始業式からしばらく経って、桜は花を降らし始めていた。そろそろ夏か、とぼうっと考えていると「やっほ!」と肩を叩かれた。
「おはよ〜、皐!」
『おはよう。
ふわふわとしたミルクティーカラーの髪を揺らして、彼女___
『また、髪の毛染めたの?』
「可愛いでしょ?」
『うん、可愛い』
棗は有名な雑誌のモデルをしていて、染髪も学校側に申請して許してもらっている。
その代わり、授業等を仕事で抜けてしまう分勉強に励み、定期考査では必ず学年順位の10位以内に入っている。
本人曰く、「普通じゃ許されないことを許してもらってるんだから、お返しはし続けないとね」とのことらしい。
「あのね、今日さ、皐の家泊まりに行っていい?」
『今日?』
「そそ!今さ、数学の範囲でわかんないところあるから、勉強会ついでに!」
『…ごめんね、今日は少し都合が悪いの。』
…彼方さんの家に泊まらせてもらうから。
その言葉は言わなかった。
「そっかあ〜!…じゃあさ、日曜日の夕方空いてない?私の仕事終わりに、少しだけ!」
『ふふ、わかった。母さんに言っておくね』
私がそう言えば、棗は満面の笑みで「ありがとう!」と言った。
昨日と同じように、淡々と授業が進んで終わっていく。真っ白なままのノートが風にのせられて、ペラペラとめくられていく。
先生の解説を話す声をバックミュージックにして、私はずっと窓の外を眺めていた。
いつしか真冬先生が言っていた
「"そらる"ってあだ名は、そらる先生が『流れる空を見るのが好き』と言っていたからつけたんですよ。…安直ですけどね」
という言葉が頭を巡る。
…私も、空が好きだなあ。
ゆたりと流れる空は穏やかな彼をうつしているようで、見てて微笑ましかった。
彼を空に例えるなんておかしな話だけれど。
チャイムが響き渡り、我に返った私は黒板を見つめ直した。
椅子と床が擦れ合う音、制服の布ずれの音、「ありがとうございました」という挨拶。
小太りな先生が教室から出ていってすぐ、そらる先生が入ってきた。
女子達がわあっと集まっているのを私はじっと見つめていた。
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (7月24日 3時) (レス) @page8 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
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