時の経過 ページ8
何時間帯が経過したのか、私は数えていませんでした。しかしひとつだけ、確かに言えることは彼女がいなくなった空白が埋まってきていること。
この世界において、傷ついたものはいずれ修復され、元に戻ってしまいます。それは物質的なものであって、見えないものには適用されないルールかと思っていましたが……。こんなところだけは現実に沿っているんですね。だって、悲しみや寂しさを埋めるのは時間だって、言うじゃないですか。永遠に埋まらない場所なんてないんですかね。
こんなことを考えているせいか、最近は時計塔に足が向きます。あの時計の針の音を聞くのは、なんだか無性に落ち着くんですよね。
「……おい、いつまでいるんだ」
「えーと、次のシフトの時間帯までですね」
ふと仕事が一段落したらしいユリウスさんが眼鏡を置きながらこちらを向きました。うーん、なんだかこういう仕草っていいですよね。こう、眼鏡を置く仕草が……いいなあ、と。
あ、そうだ。
「いさせていただいているお礼と言ってはなんですが珈琲でもいれますよ！」
「……はあ。それじゃあ頼めるか？」
「はい！」
うきうきとサイフォンの元に向かって、うきうきと淹れます。いやー、ユリウスさんと話すのは楽しいですね〜。
私がもどると、ユリウスさんはうつらうつらと眠りへ誘われている最中でした。
起こしてはいけませんね……。そーっと、そーっと……。
はっ。起こしてしまったようです。敗因は珈琲の香りですかね。
「む……。できたのか？」
「はい！ 起こしてしまったみたいで……。すみません……」
「ふん。気にすることじゃない」
やっぱり優しいですね。本当ただでさえ図々しいのにさらに図々しくなってしまうじゃないですか。これだからユリウスさんは困りものです。おこですよ、おこ。
「……九十一点。ほぼ完璧だ」
「ではどこがダメなんです！？」
「少しだが味が鈍い。抽出した後のかすの様子にもっと注目してみたらどうだ？ 下のほうのかすが粗くなっているか確認しろ」
「んー……足りなかったですかね」
いつも思うんですけど、どうして飲んで淹れ方の問題点が分かるのでしょうか……。やはりこれが真の珈琲通なのですね。
……落ち着きますなあ。
でも、いるべき場所はここではない。
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フェン - 麻酔薬さん» コメントありがとうございます。頑張ります！ (2018年9月2日 19時) (
レス) id: 5db073126a (このIDを非表示/違反報告)
麻酔薬(プロフ) - 続きが気になります、もう更新されないのでしょうか？ (2018年7月13日 22時) (レス) id: 0ff3dc7af0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェン | 作者ホームページ：@QuinPrince6
作成日時：2015年7月28日 10時
