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延命 ページ12

私は残るべきか。それとも帰るべきか。
 客観的に考えれば帰るべきだとわかっているのです。学生時代からの友人たち、良くしてくれた兄の部下の方。数少ないけれど、こんな私をかけがえのない存在だと思ってくれている人たちが確かにいます。私は彼らに会いたいです。この気持ちは嘘ではありません。

 ですが……。この世界にきて思ってしまったのです。『楽しい』と。自分のスキルを憚らず振るうことができ、何もしがらみを持たず自由に遊ぶことができる。孤児だから、貧しいから、天涯孤独だからと私を変な目で見る人もいない。(その代わりに余所者だ、という意味では変な目で見られますが)
 向こうの世界では復讐すべき相手も消え、守るべき家族も亡くし、どこか空虚な日々を送っていました。夜が来るたびに仕事終わりの兄の背中を思い出し、眠ればすべてが揃っていた学生時代が夢に浮かんでは消える。そんな、日々で。

 クライス、あなたを見るたびに感じた不思議な安らぎと苛立ちの正体は、私のあの「時間」だったんですね。

 ありがとうございます。兄を……。私を愛してくれて。

***

 ユリウスさんがあのタイミングで来てくださったおかげで、もう少しこの世界を見つめることができます! やったあ!

「……見つめないでくれませんか。不快です」
「ああ、すみません。奇麗な顔だなあと、つい」
「……」
「銃を無言で構えないでくださいよ〜」

 ハートの城の庭園に来てみました。するといけ好かない白ウサギがいたので、ガンをつけます。
 でもよく見るとアリス先輩好みの奇麗な顔をしていますね、と思い、つい見とれてしまいました……。くそっ、不覚です。
 っていうかこの銃、セーフティーないんですね……。なんと危ないウサギさんでしょう。

「おや、セシルではないか」
「あ、ビバルディさん!」

 夕日に照らされて現われたのは、艶やかな女性。ビバルディさんでした。
 凛とした立ち姿、大勢のメイドと兵士を引き連れた姿はまさに女王。私はまたも見とれ、10秒ほど息が止まってしまいました。

「ちょうどよいところに。わらわはこれから茶会を開こうと思っていたところじゃ。セシル、おいで」

 そのたおやかな、傷一つない真っ白な手で私の頬をなでると、そのまま手をとり、テーブルへと案内してくださいました。私に拒否権はないようです。……まあ断る気はありませんが!
 あと白ウサギはスルーなんですね。

ハートの城→←あったかハイムがまっていない世界



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フェン - 麻酔薬さん» コメントありがとうございます。頑張ります! (2018年9月2日 19時) (レス) id: 5db073126a (このIDを非表示/違反報告)
麻酔薬(プロフ) - 続きが気になります、もう更新されないのでしょうか? (2018年7月13日 22時) (レス) id: 0ff3dc7af0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フェン | 作者ホームページ:@QuinPrince6  
作成日時:2015年7月28日 10時

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