しにたい少年【ヒロアカ】 (ページ3)

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3話ページ3

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「……あ？」

Aはちょっと困った。飛び降りようとこのビルを選んだのに、お兄さんがいたんじゃ遠慮してしまう。
でも別のビルを最初から登るのも面倒臭い。

「お兄さん、いまから僕が使うから退いてくれない？」

「誰だよ。嫌だし」

Aには「そういう趣味」がないので人前で血を撒き散らすことに抵抗がある。しかし先客は見るからに普通じゃないらしいので、見られてもいいかとそんなふうに思った。

「じゃあいいです。気分悪くなったらごめんね」

Aは一応相手を気遣うと、顔に手を貼り付けた青年の傍を通り過ぎる。
内部と同じく老朽化していたフェンスは、Aが潜れるほどの穴があった。飛び出したトゲに制服が引っかからないように気を張る。

青年はAの行動をじっと見ていたが、何をするのか気づいて興味深そうに話しかけてきた。

「おい、なんで死ぬんだよ」

「普通、そこは何してるんだ！じゃないの？」

「見りゃ分かんだろジサツ願望者」

普通からはみ出された青年はAを睨みつける。手と髪の隙間から見える赤色の目は綺麗だった。

「生きる理由がないから」

「虐められてんの？」

「まったく。いい人ばっか」

でもそれが生きたい理由にはならないでしょ。
そう告げたAに青年は「俺と喋ろうぜ」と手招きしてみせる。何が気に入ったのかはわからない。

唖然としたAだったが、急ぐ必要もなかったので青年の気まぐれに乗ることにした。

青年は死柄木弔と名乗った。Aは彼を「死柄木さん」と呼んだ。これから死ぬ人間が知り合いを増やして何になるんだと思ったけど。

「この社会がおかしい……なァ」

Aの稚拙な思いを聞いた死柄木は反芻するように言葉を繰り返す。

「それも言い訳のひとつかもしれないけど」

「言い訳？」

「恵まれた環境、身体、個性を持っていながらも、心にはぽっかりと穴があいているんだ。地につけているはずの足先は氷のように冷たい。立っているのか、座っているのかもわからない」

Aの独白を死柄木は黙って聞いていた。

「やっぱり僕、異常だよね」

「肯定して欲しいのかよ」

「別に」

「だろうな」

分かったような死柄木の態度に、Aは一拍遅れて「え？」と聞き返した。