しにたい少年【ヒロアカ】 (ページ13)

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死柄木ページ13

＊

「みんなと出会ってから我慢が難しくなったみたい」

「はぁ」

「今までならどれだけ相反することにでも従えたのに、自分の感情を優先させてる」

超常解放戦線が組まれて数日。
ベッドの住人と化す死柄木の元にAはお見舞いに来ていた。敵連合のほとんどが大怪我を負ったというのに、最年少のAは無傷だ。

逃げたわけでも隠れたわけでもなく、むしろ前線で焼死体を増やし続けていたAは、個性柄物理攻撃を受けない。
死柄木に言わせれば「チート個性」である。

「お前、それを俺に聞かせてどうして欲しいんだよ……」

死柄木は呆れ顔をするが、リンゴの皮を剥くAには効果がない。

「今の死柄木さんは動けないから」

「随分と図太くなったなァ？」

見事な飾り切りを乗せた皿を運んでくるAは相変わらずの無表情だが、僅かに頬が上気していた。
照れているらしい。どこに照れる要素があるんだか、と死柄木は思った。

元優等生というだけあって立派なウサギだ。

「口に入れたら一緒だろ」

「そうだけど、だったらお寿司だってわざわざ乗せる必要なくない？形を整えなくたって味は変わらないよ」

「俺の見舞いにコレをする理由じゃない」

「それは気分」

死柄木は家庭環境に難のないAには、こっちが当たり前だったのかもしれないと思うことにした。
図太くなった。言い換えれば生意気になったAとこれ以上この話を続ける必要性を感じなかったのだ。

だけど、自分たちに慣れてきたと思えば気分は悪くない。

腕を動かすのも辛い死柄木の口にリンゴを差し出すAは調子に乗りすぎているが。
言うまでもなく、飾り切りされたリンゴはAが食べることになった。わかっていたのだろうAはシャクシャクと音を鳴らしている。

「お前はそのままでいいよ」

ぽつりと呟いた死柄木に咀嚼音が止まった。

「我慢なんてしなくていい。俺たちが許してやる」

無音。

反応のないAに死柄木が「返事は」とAを見ると、そこには抑えきれない口角を両手で隠す少年がいた。
一瞬の思考停止。回復した死柄木はにやりと笑う。

「……一生着いていきます」

「一生は困るなァ」

ガキだと言われるのが嫌で、Aは必死に内頬を噛んでツンとくる鼻を抑えていた。