【歌い手】暗殺者の異端日 (ページ7)

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05　GPSとヘリコプター型カメラページ7

「え?どういう事?」

　96の顔を見ればスパイがどのような仕事をしているのかさえ分かっていない様子。では、初めから教えるしかないか。
　……頭がキレない人だな。

「まずスパイと云うのは他の国に行って他の国の偉い人がどんな事をやっているのかを調べる人の事。主に国会秘密の事を聞き出し国に持ち帰り報告する人の事」
「ふーん」
「私は、そういう他の国のスパイがいるか調べていたら報告する。また、この国の繁栄に適さない人がいて殺す依頼があれば確認次第、その依頼を果たす……って感じかな」
「あー…えっと…」

　96の反応は“意味は理解出来ているんだけど私のいる世界とは違っててそっちの意味で理解出来ない”だ。
　まあ、普通はそうだろう。
　……ゆっくり理解していけばいい。
　そう思っていた。

「……じゃあ言い方悪いけど、“政府の犬”って事?」
「まあ、そういう事。でも俺はもっと力と情報と仲間を付けて政府を裏切るけどな」

　96は、分かっていた。そして、常人では頭がショートするであろう事実をきちんと現実として受け止めた。

　“裏切る”。
　本心を口にしても問題はない。
　例え96が政府に対して言ったとしても相手にはしないだろうし、仲間に言ったとしても俺と同じ職業や俺よりも格が上の人がいるはずない。

「へえ…成る程。面白そうだね!!」
「いや、面白そうって…96ねえ…」

　…何も分かっていないだろお前は。
　これ、結構危ない事なんだぞ。
　政府という一般市民の見方まで裏切ってるし。

　まあ、だからこそ“面白い”人材なのだが。

「手順?みたいなのは、どうするの?」
「ああ。それはGPSでと、ヘリコプター型の特殊なカメラを使って手順を決める」

　…そろそろ、PCの方にヘリコプター型とGPSどっちも来るはず。
　まだ左右どちらも青いままの画面を見つめながら思う。

ピピっ

　音が鳴った。
　動画と静止画が送られてくる合図。

「…来た」
「え?な、何が来たのA……ってあれか!」

　約15間鳴り続け、左右の青いディスプレイ画面から景色が写し出される。

　写し出されたのは船越剛史の家とその周辺。