とある歌い手のシェアハウス【本編】 (ページ12)

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奏と思考_3、話したい_1【星野月香】ページ12

彼女_未重さんは逃げるように部屋から出たようだ。

迷惑だとは全くもって感じなかった。寧ろ初対面の私が弾くピアノを聴いてくれたのだ。

｢仲良くなれるといいな…｣

自分でもこんな感情を抱いていることに驚いている…何故だろうか。
友達までとはいかなくてもいい。帝ちゃんとの仲の良さもそれくらいなのだから。

演奏するのをやめて、鍵盤に布を被せた。
そして部屋を出て、彼女を追う。まだ時間はたってないはずだから追いつくかもしれない。

_そうしている内に彼女の背中が見えてきたので、思わず声をかけた。

｢あの…私で良かったら、お掃除のお手伝いしてもいいかな…？｣

彼女は目を丸くして驚いてる様子だった。やっぱり、迷惑だったのだろうか。それとも急にタメ口になったから吃驚しただけか。

｢えっ…いいんですか？！ありがとうございます！｣

と屈託のない笑みを此方に向けて快く受け入れてくれたようだった。
私より年下の人が少ないから面倒を見ようとしているのか、それは私には分からなかった。でも、仲良くしたいという気持ちは強い。

｢うん…1人よりも2人でした方が早く終わると思うし、私も使ってたところだからね｣

これは本音だ。
彼女が気にしないようにと最低限心掛けたが、大丈夫だろうか。

｢わぁっ…！本当にありがとうございます！じゃあ、移動しましょうか｣

｢そうだね、一緒に頑張ろう｣

このとき無自覚だったが、私は微笑んでいたらしい。
そして彼女と一緒に物置部屋へと歩き始めた。
_そのとき、誰かとすれ違いその人に声をかけられた。

ｰｰｰ
想良ちゃんお借りしました…！