エピソード37 ＊ 土方 ページ43
飛行機に乗り続け…着いたのはそう…
「沖縄…」
家族は全員いなくなったあの日以来、県外はおろか町からも出ていなかったあたしには、新鮮な風景で…。美しい海を眺めながら、大きく深呼吸をした。
…潮の匂いって、こんな感じなのね。
初体験に若干感動しつつ、あたしは豪炎寺の方を振り返った。
「さて…豪炎寺、そろそろ行きましょうか」
「そうだな…同じ所に長居するわけにもいかない」
顔が見えないほどにフードを深く被った豪炎寺は、肩にかけた荷物を抱え直しスタスタと歩いていく。
あたしは慌ててその背中を追いかけた。
「よぉ、お前達が鬼瓦さんの言ってた二人組だな!」
…指定された場所で待っていたのは、巨漢の男だった。いや少し語弊がある、彼は一応中学生らしい…が、その年齢に見合わない巨体を持っているのだ。
しかし、人柄は良さそうだ。
「えっと…よろしく、土方くん」
「よろしく」
「おう、よろしくな影浦、豪炎寺!!」
豪快に笑う土方に気圧されはせども、不快に思うことはなかった。どちらかというと好印象である。
豪炎寺も彼のことは嫌いではなさそう。
…そのまま、あたし達は土方家に案内された。
まさか妹弟があんなにいるとは知らなかったけど…どこか、彩音がいるような、そんな気がして。少し切なくて、でも昔に戻れたようで…嬉しかった。
初めて会ったのにも関わらず笑顔で話しかけてくれる彼らにほっこりしているうちに、夜になっていた。
土方の作ったご飯を食べて、お風呂を借りて…。後は寝るだけ、のはずだった。
深夜。
玄関の戸が開く音と共に、あたしの意識は浮上した。
…誰か外に出て行ったな。多分豪炎寺。
素早く外着に着替えて、後を追った。
「…なに黄昏てるの」
「……日渡か」
夜の海をジッと見つめる背中に声を掛けると、少し弱々しい答えが返ってきた。きっと、昼間の元気はただの空元気だ。
「なにに悩んでるわけ?」
豪炎寺の隣に座りながら問いかける。
ジッと遠くの方を見つめる豪炎寺の瞳は、酷く虚ろに見えた。
「…俺は、雷門を…戦友を、裏切ってここにきた」
「……」
…まるでその一言を起点としたかのように、豪炎寺は次々と語り出す。
「夕香も、円堂達も守りたかったんだ…。でも、両方とも失ってしまった。守れなかったんだ。挙げ句の果てには、今まで一緒に戦ってきた友の期待を…裏切って、振り払ってしまった。
自分が情けないんだ」
少しだけ掠れ、震えた声でそう独白する彼が、酷く小さく見えた。
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北星 ベガ(プロフ) - 璃鶴さん» コメントありがとうございます!!すごく嬉しいです、頑張ります!(*^^*) (2017年9月11日 15時) (
レス) id: bad6c4af49 (このIDを非表示/違反報告)
璃鶴 - 面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2017年9月11日 7時) (レス) id: 866aa428c6 (このIDを非表示/違反報告)
北星 ベガ(プロフ) - あいかさん» ありがとうございます笑 (2017年7月24日 11時) (レス) id: bad6c4af49 (このIDを非表示/違反報告)
あいか(プロフ) - 頑張ってください！応援しています！ (2017年7月24日 7時) (レス) id: 70607cf5f4 (このIDを非表示/違反報告)
北星 ベガ(プロフ) - あいかさん» 初めまして! 更新が滞っておりすみません。更新再開に向けて頑張りますので、どうか待っていただけると嬉しいですm(_ _)m (2017年7月16日 13時) (レス) id: bad6c4af49 (このIDを非表示/違反報告)
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