交渉 ページ4
「……ということがありまして、こちら妹です」
「えっと……」
そりゃ反応に困りますよね。そりゃそうだ。そもそも私に妹がいることを知らなかったようだ
「君に妹……」
「ほら、似ているでしょう?」
「そうじゃなくて!……どうして急に」
「逃げてきた。お兄ちゃんと一緒」
陛下……ヴィクトールもある程度私の事情は知っている。
理由はこれだけで十分だろう
「まだ15ですから放っておくわけにもいきませんし」
「でも一体どうしたらそんな包帯まみれになるんだい?」
「我が家はそういう教育方針なんです。貴方が知っての通り」
それだけ言うので精一杯だった。思い出したくない記憶が頭を過る。
元は私だって妹と同じ家から逃げてきた身。痛いほどその気持ちも分かる。私も妹も被害者だ。
「そんなに驚かなくても。この程度なら私も幼少期良くされました。貴方もご存知でしょう?」
「あ、あぁ。でもあの時のハイネは転んだだけって言ってたよね?」
「あの時は家の方針に従っていましたからそう言うしか無かったんです。それに話したら話したで貴方も面倒くさそうですし」
ヴィクトールは必要以上に過保護だ。王子達を見てそれは痛いほどわかるし、年若い彼にその気質が見えたのもよく知っている。
「本格的に調査をしなければな」
「それが簡単に出来たら私達はこうなってませんけどね」
あの家とグランツライヒ王家は中々面倒な関係だ。
あの家が有力貴族でも上級貴族でも無い割に表面的にいい暮らしができてたりするのはそれが原因である。
そして今はグランツライヒ王家唯一の汚点だ。
「この件はどうにかする。君の滞在も許可しよう。ただ……」
「それはお兄ちゃんから聞いた。大丈夫」
「そうか」
きっとヴィクトールなら本当にどうにかしてしまうだろう。
私達が平和に暮らせる日も来るはずだ。
「そうだ、部屋はどうしようか」
「お兄ちゃんと一緒でいい」
「え」
「狭くないかい?」
「問題ないと思う」
そうして説得云々の前に王宮での滞在が許可された。
同室になったのはかなり驚きましたけどね
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月宮唄音(プロフ) - 不定期更新です (2021年5月29日 10時) (レス) id: 71411319ca (このIDを非表示/違反報告)
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