再会は突然に ページ2
その日は買い出しの為に街に出ていた。
必要な物も買い終え王宮に戻ろうとした時ドンッ、と誰かとぶつかってしまった。
「大丈夫です……か……!」
「……」
転んでしまったその子供は私を睨んでいた。まるで裏切り者、と言わんばかりの顔である。
久しぶりに見るその顔はずいぶん酷い顔をしていた。涙で濡れ、殴られ蹴られた後らしきアザができ、裸足でいる。
服こそしっかりした物だが所々汚れ破れている
「アスナ」
「……」
アスナと呼んだその子は……私の妹だ。
その姿を見て改めてあの家は変わらないのだと実感する。
「さっさとあの家出た方がいいですよ」
「誰のせいだと……お兄ちゃんがいなくなったせいでボクがこんな目に……!」
「人間らしく生きるにはこうするしか無かった。今の貴方も同じでしょう」
「……」
同じ家にいたとはいえ疎遠だったため、ほぼ他人にも近い。
でも間違いなく私と血を分けた兄妹であるのは間違いなかった。
「待って」
「なんですか?」
「ボクを置いていったんだから連れて行ってよ、お兄ちゃんの所に」
「無茶言いますね……」
しかしこの傷だらけの姿の原因は私にもある。
それにここで見捨てて死なれても困る。選択肢はひとつしかないようだ。
「説得出来なかったら諦めて下さい。その時はマリアヴェッツェラ教会に連れていきます」
「説得?」
「今住んでいる場所が特殊なんですよ」
そう言いながら王宮を指差す。私は住み込みで働く王室教師。そう、住所がヴァイスブルク王宮である。
「痛い思いしないでいいなら」
「……くれぐれも無礼が無いように」
一応一通りの教養はあるはずだ。その辺の心配はしていない。
それにしても酷い傷の数だ。陛下に謁見する前に手当をしなければ。
……いつかの私と姿が重なる。私もこうだったのだ。あの時は無力でも今は違う。きっと、大丈夫だ。
守りきれないと、置いていくことを選択したあの日とは違う。
「お兄ちゃん」
「王宮が安全だと思わないでくださいね。あの人達も陛下に謁見しに来ますから」
「……」
この国において私達が平和に暮らせる場所なんてないのである。
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月宮唄音(プロフ) - 不定期更新です (2021年5月29日 10時) (レス) id: 71411319ca (このIDを非表示/違反報告)
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