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@ ページ11

泣くべきは自分じゃなくて伊野尾ちゃんなのに、どんどん心の中に黒い靄がかかってきて、目の前が滲んでいく。


「その頃の伊野尾……例えば撮影が機材トラブルで遅れたとか、そんなんも、何も伊野尾は悪くないのに自分のせいだって思うようになってて。


安心させたくて、声かけたら、布団から顔だしてさ。ぼろっぼろ、泣きながら……怖い、助けて、そばにいてって、ずっと。
落ち着いてから話を聞いたら、誰か人に触られた後は、何か食べてなくても吐くし、ご飯も、ちょっと食べたらすぐ気持ち悪くなるって。」


なんにも知らなかった。ただの、ちょっとした拒食症だと思ってた。
だから、俺も、ほかのメンバーも、大丈夫だよって、たくさん触れて、スキンシップをとっていた。
それが、伊野尾ちゃんには。


「お前らが悪いわけじゃないよ。言わなかった俺と伊野尾が悪い。

……それでも、伊野尾は、どこに対してもいつも通りの自分でいたかったみたいで、大学の友達とも、頻繁に遊んでた。

そんな中さ、伊野尾に告白したやつがいたんだよ。
それが、伊野尾の言うあの人。
すぐに俺に報告してくれて……こんな俺でも必要としてくれた、嬉しかったって、久しぶりに笑顔見せてくれた。
だから俺も安心してたんだ。」


こんな俺でも必要としてくれたって、
俺は、俺たちは、いつだって伊野尾ちゃんがいないとダメなのに。


「告白オーケーしてもらって、ちゃんと、段階踏んで伊野尾のこと抱いて、伊野尾もそれを求めた。
……俺にとって伊野尾は、恋愛対象にはならないけど、恋愛対象以上に大切っていうか……だから、俺にはできなかったわけなんだけど。

やっと、拒食症も治って、また今まで通り、恋人ってのを作って、幸せに生活できるって、俺も思ってたよ。」


だけど、と薮ちゃんは1回、言葉を切った。
俺を見つめるその目は、苦しみに満ちていて。
この人も、伊野尾ちゃんにしか頼ることをしないから、いろいろなことを溜めすぎて、お互いに壊れてしまいそうな、そんな危うい綱渡りをしているような感じがして、ものすごく不安になった。

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大山翔やん(プロフ) - 初めて酢雨さんの小説読みました。このお話素晴らしすぎます。途中泣きそうになりました。 (2017年7月27日 17時) (レス) id: 02797e3c1f (このIDを非表示/違反報告)
ちょっきん(プロフ) - 酢雨さま。完結おめでとうございます。始まった時からこのお話が大好きで、ずっと読ませていただいていました!最後はハッピーエンドで安心しました。素敵なお話ありがとうございました!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: b9d9179b71 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - 完結おめでとう!&お疲れ様です!影ながらずっと読ませていただいてました。とても素敵なお話でした! (2017年7月26日 0時) (レス) id: adf1c6e9c9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - このお話大好きです。続きも楽しみにしてます! (2017年5月31日 21時) (レス) id: 1d0093e1d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酢雨 | 作成日時:2017年5月11日 18時

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