検索窓
今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:181,719 hit

@ ページ1

目を開けたら、心配そうな顔のメンバーが俺の顔をのぞきこんでいた。


圭人の、やまちゃん、って震えた声がして、それからみんな、俺の名前を呼んで。
あーそっか、最近忙しいから寝てなくて、倒れたんだって理解して、返事をしようとすると。


「……涼介……?」


はくはく、と口を動かしても、声をだそうとしても、俺の喉が空気を震わせる気配は一向になくて。


「……涼介、声……出ないの……?」


震えた知念の声にみんなが俺を見る。
頷くと、みんなの顔が表情を失くした。
いや、正確には。

ただひとり、伊野尾ちゃんだけが、いつも通りの顔をしていた。


「え、と、ひとまず、これ、」


メモ機能を開いたケータイを薮ちゃんに渡される。
何を打てばいいのかわからなくて、薮ちゃんを見ると、唇をとても強く噛んでいた。


「僕、お医者さん呼んでくる。」

「じゃあ俺、山ちゃんのことマネージャーに報告する。」


知念とゆーてぃーが動いて、みんながそれぞれに動き出す。
じゃあ俺は、事務所に、とか。

でも、伊野尾ちゃんだけは俺のそばから離れなくて。


『伊野尾ちゃんはどっか行かないの?』


託されたケータイにはじめて文字を打ち込んで伊野尾ちゃんに見せた。
すると伊野尾ちゃんは、へらりと笑って。


「だって、大変なことだけど……声が出なくても山田は山田だもん。」


そっか、伊野尾ちゃんは、少しの間だけ仕事のストレスで拒食症みたいなものになった事があったんだっけ。
じゃあきっと、この声もそうなんだろうな。だから伊野尾ちゃんは焦ってないんだ。


「最近山田、ひとりぼっちだー、さみしいー、って思ってたでしょ。」

『そうなのかな?』

「だって、一人暮らしなわけだし、癒してくれる彼女もいないわけでしょ。確か1週間くらい前に別れたって言ってたじゃん。

寂しい時はね、しんどくなるんだよ。俺も、そうだったからね。」


大きな飴玉みたいな目が俺を見て、また微笑んで細められる。
その目はなんだか、寂しそうな色をしていた。

@→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (303 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
739人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

大山翔やん(プロフ) - 初めて酢雨さんの小説読みました。このお話素晴らしすぎます。途中泣きそうになりました。 (2017年7月27日 17時) (レス) id: 02797e3c1f (このIDを非表示/違反報告)
ちょっきん(プロフ) - 酢雨さま。完結おめでとうございます。始まった時からこのお話が大好きで、ずっと読ませていただいていました!最後はハッピーエンドで安心しました。素敵なお話ありがとうございました!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: b9d9179b71 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - 完結おめでとう!&お疲れ様です!影ながらずっと読ませていただいてました。とても素敵なお話でした! (2017年7月26日 0時) (レス) id: adf1c6e9c9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - このお話大好きです。続きも楽しみにしてます! (2017年5月31日 21時) (レス) id: 1d0093e1d5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:酢雨 | 作成日時:2017年5月11日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。