ピアノ ページ2
俺はアイツ、相田が嫌いだ。
アイツはこの学校の音楽学科始まって以来の天才と名高く、幼い頃から数多くのコンクールで賞を受賞し、大人から、学校からも期待され入学してきた。
オマケにイギリスの血が混じったクウォーターらしく、綺麗な顔立ちをしている。
それでいて男子の下ネタにも笑顔で混ざっていけるようなコミュニケーション能力もあり、女子にも男子にも人気なやつなのだ。
対して俺は世で言うコミュ障。黙々と勉強練習し、音楽の名門として知られるこの学校には受かったものの、やはり才能を持った人々が集まる場所。1年もたてばもう入学当初の意志は消失していた。
俺だって小学校のころは天才と呼ばれ、専門の雑誌に小さくだが載ったことはあった。けど、その後すぐに現れた本物の天才、相田に、全ての名声が奪われ、俺は表舞台から下ろされてしまった。どんなに頑張っていい賞をとっても、必ず先に相田がいる。それでも我武者羅に努力してこの学校に入っても、やはりコイツがいるのだ。
全くやってられない。
それ故に相手は全く悪くは無いと分かってはいるのだか、一方的に敵意を持ってしまっているのだった。
席替えをした。
新年を迎え始まった新学期、早々にされた席替えで俺はなんと宿敵である相田と席が隣になってしまった。そしてそれ以来、毎日飽きもせず昼食に誘ってくる。
「高野!飯食お!今日は何処で食べよーかね?」
「だから、俺に構うなっていってるだろう」
「そう言っていつも一緒に食べてるじゃん、高野はあれだねー、ツンデレだ!」
断じて違う。
そうなのだ、俺は毎回これが断れない、こいつはなんど断っても諦めないし、こいつと食べたい奴らの視線もかなりいたいのだ。コミュ障故に友達もいないし、友人を理由に断ることもできない。だから毎回、こちらが折れて二人で連れ立って昼食を食べることになってしまっている。
「しょうがない、行けばいいんだろ」
「やった!じゃあ今日は屋上の前の階段にしよう」
楽しそうに笑いながら俺の弁当をもってあるくこいつはやはり背が高い。並んで歩きながら少し上の相田の顔をみると、碧色と目が合う
「なに?俺に惚れちゃった?」
「バカ言うな、...なんでいつも俺を誘う?俺なんかと居ても何も面白くなんかないだろ」
「そんなこといわないでよ、......なんで誘うかってそれはさ、」
いつの間にか付いた階段を、相田は一弾飛ばしで駆け上がる。
振り向いたその目が一瞬真剣味を帯びた気がした。
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作者名:いつか | 作成日時:2017年10月14日 22時