crayon03 ページ9
『急いでる』の言葉の意味は言わずとも理解できた。
だからこそ、こんなところで立ち止まっている暇はなくて。
気が付いたら一目散に走りだしていた。
校舎の下調べはしているから、教室がどこにあるのかが分かる。
非常階段を使った方が早く辿り着けることを知っていたから、急いで階段を駆け上がった。
教室に鍵は掛かってなくて、扉は何の抵抗もなく開いた。
だけど中には誰もいなくて、どうやら僕らが先に到着したようだった。
が、そのとき廊下から足音が聞こえた。
裕てぃーがハッとして、僕の方を見た。
「知念、ここに隠れて!」
彼が指さしたのは教室の後ろにある掃除用具入れ。
「俺ならダメだけど、知念なら大丈夫。合図を聞き逃さないで。」
いつになく真剣な様子に、流石に突っ込む気にはなれずに素直に中に入る。
思ったより窮屈だけど何とかポジションは取れた。
隙間から夕陽の射し込む教室を眺める。
裕てぃーは教室の鍵を持って外に出た。
ここからでは見えないけれど、声はハッキリと聞こえてくる。
「あれ?さっきの!」
裕てぃーがわざとらしく言うと、その相手である薮宏太が返事をした。
「事務室、分かりました?」
「お蔭さまで。今はさっきの小さいのが話してるんだ。俺は頼まれて教室の施錠をね。」
「…なるほど。」
上手い言い訳だとはお世辞にも言えなくて、気を抜いたらここから飛び出して全力で突っ込んでしまいそうだった。
だけどそれをどうにか抑え込んでいるのは、きっと僕の『任務』に対する価値観が変わって来たからだと思う。
「あっ!もしかしてここのクラスの子?忘れ物…とか?」
「そうなんです。だから施錠は俺がやりますね。」
「了解、それじゃあ任せるね。」
鍵を受け取った薮宏太が教室の鍵を開ける。
ガチャ、と無機質な音が教室内に響いた。
一気に高まる緊張に思わず息を呑んだ。
一発で成功させなきゃ。
何度もやり直しだなんて出来ないから。
思えばやり直したい過去なんてたくさんあった。
それがくだらないことであったり、今でも後悔していることだったり。
……いけない、今はちゃんと集中しなきゃ。
僕は隙間からまた教室内を覗く。
しかし、そこには予想していなかった光景が待ち受けていた。
薮宏太が、スケッチブックを両手で大切そうに抱えていた。
僕はその光景を見て、何故か体が動かなくなった。
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天凪(プロフ) - 千種さん» こちらこそ遅くなってしまい申し訳ございません…!素敵なご感想ありがとうございます(*^^*)嬉しすぎるメッセージのおかげで元気が出ます♪これからクライマックスまで温かい応援よろしくお願いします(〃'▽'〃) (2017年5月15日 17時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
千種 - 遅くなってしまいましたが、移行おめでとうございます!大好きすぎるこの作品。いつもドキドキ、ワクワクさせてもらっています(*´▽`*)これからの展開、楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年5月13日 18時) (レス) id: cd7a5815e3 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» いつも温かい応援ありがとうございます!嬉しすぎるコメントにいつも元気をもらってます(*^▽^*)是非是非ラストまでお付き合いください!これからも更新頑張ります! (2017年5月6日 15時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 移行おめでとうございます!天凪さんの作品、大好きです!!これからも頑張ってください! (2017年5月6日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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