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epilogue ページ43

side 侑李



ピンク色のリボンでラッピングをしてもらった花束をそっと置いて手を合わせる。
Aが無くなってからもう数年が経つ。
けれどそれをまだ実感できなくて、本当はもっと最近だったんじゃないかと思えた。



いつも夢で幸せだったあの頃を、Aの居たあの頃を見ていた。
けれどあの日から彼女の夢を見たことは無い。


それが良い事なのか悪い事なのか、両方に取れるけれど僕はあくまで前向きに考えている。


「Aの居ない毎日は本当に退屈だよ。でも僕は今、すごく幸せだから。心配しないで。」



『侑李のことだから、きっと大丈夫だよ。』


どこかで笑いながらAはそう言うだろう。
何となくそれが想像できた。



僕は今、Aの残してくれた未来を生きている。
決して綺麗な物じゃないけれど、それでも僕は毎日を大切に生きている。


大好きな今を、大切な未来を守るために。
僕は今も時空管理委員会で、必死に仕事をこなしている。




「それじゃあ行くね。また来るから。」


ラッピングのリボンがひらひらと風に揺れる。
まるでそれは、彼女が手を振っているようにも感じられた。






時間が経てば自ずと成長できるという訳ではない。
僕は今でも大雨や雷の音が怖いし、酷い時には動けなくなってしまう。


過去を乗り越えたつもりでも、急には成長できない。
だから僕は今でも大嵐の日は誰かと一緒に居ないと、不安に押しつぶされそうになる。


その点では何も変わらないけれど、僕はあの日確かに変わった。
ずっと後悔していた、心残りだった過去を断ち切った。


皆が居たから、僕は今ここに居る。
もしあの時、皆が居なかったらきっと僕はAと二人で永遠にあの過去の狭間にうずくまっていただろう。
何も変わらないまま、変えられないまま。





道は既に体が覚えていた。
『第7隊』と書かれた、僕の大切な仲間のいる部屋のドアをノックする。


時間には少しだけ遅れたけれど、彼らなら笑って許してくれるはずだ。


仲間って、友達って良いね。
当たり前の感覚を僕はやっと手に入れる事が出来た。




「ようこそ第7隊へ!」



あの時と同じ言葉と同時に扉が開いた。
僕はその中に居る仲間に笑いかけ、一歩中へと踏み出した







-fin.

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天凪(プロフ) - 千種さん» こちらこそ遅くなってしまい申し訳ございません…!素敵なご感想ありがとうございます(*^^*)嬉しすぎるメッセージのおかげで元気が出ます♪これからクライマックスまで温かい応援よろしくお願いします(〃'▽'〃) (2017年5月15日 17時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
千種 - 遅くなってしまいましたが、移行おめでとうございます!大好きすぎるこの作品。いつもドキドキ、ワクワクさせてもらっています(*´▽`*)これからの展開、楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年5月13日 18時) (レス) id: cd7a5815e3 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» いつも温かい応援ありがとうございます!嬉しすぎるコメントにいつも元気をもらってます(*^▽^*)是非是非ラストまでお付き合いください!これからも更新頑張ります! (2017年5月6日 15時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 移行おめでとうございます!天凪さんの作品、大好きです!!これからも頑張ってください! (2017年5月6日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年5月5日 23時

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