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vanish04 ページ27

「あの時に見たの。侑李が防衛部に配属されて、紙一重に巻き込まれてこの時代に来るって事。」

「……全部知ってた上で、黙ってたの?相変わらずタチが悪いね。」

「相変わらず、って言っても私は何も変わってないからね。」

「……ん?」

「私の時間はここで止まってるから。だから、何も変わらないのは当たり前でしょ?」



……何だ、ややこしい事になってきた。
ともかく、僕が防衛部に配属されたことも紙一重にあったことも分かっているなら話は早い。



「笑ってもいいよ。人を蹴落としてまで掴んだ監視部からあっさり見放されて、ハズレくじだって噂の防衛部に配属されてるんだから。」

「どうして?何も面白い事なんてないのに?」

「……素直なところは、やっぱりAだね。」



久しぶりに見るその笑顔や仕草。
全てが懐かしくて、その一つ一つを見せるたびに僕は泣き出しそうになる。
失ってしまった時間を再び取り戻したという幻想でも、夢でも。
それでも目の前にAがいるという現実があるだけで、僕は幸せだった。




「でもね侑李。侑李は元の場所に帰った方がいいよ。」

「……っ。」



そんなこと、分かってる。
僕は幼い頃からずっと、時空管理委員会に尽くす為に研修を受けてきたんだ。
ここだけが心の拠り所で、それだけが僕の唯一だったんだ。


だけど、それらを全て手放してもいいって思える存在に……君に出会ったから。
だから覚悟を決めたんだ。
今さら戻るなんて出来ない。


ここまで来たんなら、進むしか道はないんだ。
戻るなんて選択肢はここには無いんだから。



「だったら一つ、条件がある。」

「何?」

「Aが見た『未来』を教えて。」




それまでは全く耳に入らなかったはずの雨音が部屋中を埋めつくした。
そのノイズに近いような音は僕の心を掻き乱すには充分すぎて。
まるで誰かが流した大量の涙のようにも思えた。




「……いいよ。だけど後悔しないって、約束できる?」

「……聞いてみなきゃ分かんない。だけど、どんな結果であれ僕は受け入れる。」



そっか、と彼女は目を伏せた。
本当は僕だって怖かった。


あの日、君が居なくなってしまったあの日に何か理由があるなら。
ましてやそれが僕が原因だとしたら。
僕は知らない方が良かったと後悔してしまうのだろうか。



そしてまた、知らなかった『あの頃』へと手を伸ばしてしまうのだろうか。

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天凪(プロフ) - 千種さん» こちらこそ遅くなってしまい申し訳ございません…!素敵なご感想ありがとうございます(*^^*)嬉しすぎるメッセージのおかげで元気が出ます♪これからクライマックスまで温かい応援よろしくお願いします(〃'▽'〃) (2017年5月15日 17時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
千種 - 遅くなってしまいましたが、移行おめでとうございます!大好きすぎるこの作品。いつもドキドキ、ワクワクさせてもらっています(*´▽`*)これからの展開、楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年5月13日 18時) (レス) id: cd7a5815e3 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» いつも温かい応援ありがとうございます!嬉しすぎるコメントにいつも元気をもらってます(*^▽^*)是非是非ラストまでお付き合いください!これからも更新頑張ります! (2017年5月6日 15時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 移行おめでとうございます!天凪さんの作品、大好きです!!これからも頑張ってください! (2017年5月6日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年5月5日 23時

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