interlude01 ページ19
side 涼介
グニャグニャと歪む空間が徐々に形を取り戻し、一つの空間を作り出した。
窓から差し込む夕日が室内を真っ赤に染める。
そこは覚えのない場所で黒板と教壇、それから大学の教室みたいに段差のついた連なった机の数々。
俺は何故か一番後ろの席に座っていて、俺の他には誰もいなかった。
と、思った矢先カーテンがふわりと揺れた。
窓から入ってきた風だろう。
風が収まって、カーテンが元に位置に戻るとそこには誰かが居た。
生憎の夕日のせいでシルエットしか見えないが、すぐにそれが誰なのか分かった。
「…知念!」
彼の名を呼び、席を立ち上がる。
一番後ろの席から、教壇の真横の窓まではほぼ対角線に移動しなくてはならない。
知念は俺の声に気付いたのか、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
「あっ……!」
向かっていた足がふと止まる。
知念の表情は、今まで見せたことのない表情だった。
一見すると悲しそうな表情。
だけどその瞳の奥には俺の知らない、深い深い憂いを帯びた夜の色。
それ以上は近づけなかった。
不思議と足が止まったまま動けない。
彼の顔を夕日が真っ赤に照らす。
その頬に照らし出された一筋の赤い光の線が、まるで血の涙を流しているようにも見えた。
「知念…。」
彼は何も言わなかった。
そして黙って目を瞑って、一歩後ずさった。
次に目を開いた時、彼の瞳の奥には違う感情が映し出されていた。
悲しそうなことに変わりはないけれど、寂しさと少しの怒り、それから憎しみ。
たくさんの負の感情が渦巻くその瞳を、じっと見ていると彼の抱えている荷物の大きさを思い知らされるようで。
「……バイバイ。」
やっと口を開いてくれたかと思うと、その別れの一言。
彼は開いている窓に寄り掛かる。
「待って……知念ダメだ!!」
俺がようやく止まっていた足を動かし、知念の元に駆け寄って行く。
しかし彼は目を閉じたまま、軽く地面を蹴る。
「知念…!!!」
やっと窓際までたどり着いたときには、既に知念はそこに居なくて。
俺が精いっぱい伸ばした手は虚しくも空を掴み、そのまま彼は窓の下へと落ちていく。
その表情は何故か笑っていて、
『これで、僕も…』
頭の中に知念の声が響いたかと思うと、現実に引き戻す鈍い音が聞こえた。
声が出なくて、助けを呼ぼうにも足がすくんで動かない。
怖くて窓の下を見ることが出来なかった。
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天凪(プロフ) - 千種さん» こちらこそ遅くなってしまい申し訳ございません…!素敵なご感想ありがとうございます(*^^*)嬉しすぎるメッセージのおかげで元気が出ます♪これからクライマックスまで温かい応援よろしくお願いします(〃'▽'〃) (2017年5月15日 17時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
千種 - 遅くなってしまいましたが、移行おめでとうございます!大好きすぎるこの作品。いつもドキドキ、ワクワクさせてもらっています(*´▽`*)これからの展開、楽しみにしています!頑張って下さい! (2017年5月13日 18時) (レス) id: cd7a5815e3 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» いつも温かい応援ありがとうございます!嬉しすぎるコメントにいつも元気をもらってます(*^▽^*)是非是非ラストまでお付き合いください!これからも更新頑張ります! (2017年5月6日 15時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 移行おめでとうございます!天凪さんの作品、大好きです!!これからも頑張ってください! (2017年5月6日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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