*30*高校2年、夏 ページ32
「ねえA、●◎公園に来てくれない?」
『え?なんで?』
「ちょっと相談があるの!ねぇお願いっ」
『いいけど…』
あの時から季節がひとまわりし、高校2年の夏休み。
涼しげな風が吹き始めた夕方、私は友達に公園へと呼び出された。
その友達とは、去年、CDを貸してくれた友達である。
特に断る理由もないので、行くことにした。
「―…あっ、きたきた。A−!」
『いたいた。相談って何?』
「まあ、とりあえず座ってよ」
友達に、ベンチに座るように勧められる。
二人で座る。
公園には、この時間帯には珍しく誰もいなかった。
「あのさー…私、引っ越すことになったんだよね」
『え!?』
「父さんの転勤でさ」
『うそ…っ』
友達が、なんでもないことのように言った言葉は、何よりも私の心に突き刺さった。
動画の件でかなりつらい心境のときに、この報告は、私をすごく傷つけた。
ショックだった。
―…私は、まだ、友達に“歌い手始めたの”ということも、言っていなかった。
恥ずかしいという思いが勝っていたのか、照れ隠しだったのか知らない。
「嘘じゃないってば。…ごめんね」
『…ん、大丈、夫っ…』
あふれそうになる涙を必死に抑える。
『それで―…相談って、何?』
がんばって明るい声を出そうとするも、やっぱり暗い声にしかならなかった。
すると、友達はさっきまでの表情をくるりと変え、
―…妙に、爽やかに笑った。
「あのね、Aに、歌い手やめてほしいんだ」
『え…っ?』
一瞬、何を言っているのかが分からなかった。
脳内はオーバーヒート状態。
エラーエラー。
赤いランプがチカチカと光っている気がする。
『私、歌い手ってこと言ってな…っ』
「うん、言ってないよ。でも私、知っちゃったんだもん」
『っ…』
「ショックだったなー、隠し事されてて」
『っ、違う、ごめん…っ』
「いいよ、別に」
手を握り締めてあやまる私に、急にぽつりと落とされた言葉。
「私、Aのこと嫌いだから。裏切られようが何されようが気にしないし」
―…心臓を凍った手でわしづかみにされたような気分だった。
涙なんて、驚愕で出てこない。
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来賓 - 天月さんだったら天「〜〜」みたいな感じにしてもらえると嬉しいです!お願いします(・ω・`人) (2017年9月28日 19時) (レス) id: 00ddd4f313 (このIDを非表示/違反報告)
カノン - 読み返し3回目です! (2017年8月8日 12時) (レス) id: 451c3d138b (このIDを非表示/違反報告)
CORITTK2(プロフ) - 読み返し10回目(*^^*)なう〜(*´ω`*) (2016年11月27日 0時) (レス) id: 6ac753d7da (このIDを非表示/違反報告)
遥 - 読み返し3週目なうです (2016年11月11日 22時) (レス) id: b5ff9d8745 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃_ayano(プロフ) - 何度読み返しても最高です(*´-`) (2016年9月20日 7時) (レス) id: 1e4aaa14fc (このIDを非表示/違反報告)
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