*23*さめたスープ ページ25
*しゃむおんサイド*
「まふくーん、入るよー」
隣の天月くんが、スープとパンを持ってまふくんの部屋の扉を叩く。
僕は、まふくんが小さく返事をしたのを聞き入れてから、その扉を開けた。
「まふくん、大丈夫?」
「ん…うん」
俺が声をかけると、小さく丸まった布団のかたまりが動いた。
ひょこ、と出るまふの綺麗な顔。
―…やっぱり、顔色、悪い。
それに、天月くんもやっぱり気づいたようで。
「まふくん、はい、スープとパン」
ベッドの横の小さい机に、それを置く。
すると、まふくんは飛び起きて。
「おなかすいてた!ありがとう、天月くん、しゃむくん」
パンを一口食べて笑うまふくん。
こう見ると、悪い人になんて到底見えない。
さっきの鋭い瞳なんて、全く浮かんでこない。
―…すると。
コンコン。
まふくんの部屋の扉が、ノックされた。
「はーい、どうぞー」
と返事するまふくん。
入ってきたのは。
「あ、灯油さん」
天月くんが言ったとおり、灯油さんが立っていた。
まふくんがうれしそうに笑う。
「あー、灯油さんだ。どうしたの?」
灯油さんは少し笑って。
でも、その後にすっと表情を引き締めて言った。
「なあ、まふまふ。Aにそんな態度とっても、お前が満足するわけでもないんだろ?」
―…灯油さんの直球が、まふくんの表情を凍りつかせる。
「灯油さん、今それは―…」
「しゃむおん、ちょっと静かにしてろ」
「でもっ」
「しゃむおん」
「っ」
いつもと違う低い声で諭されて、何も言えなくなる。
灯油さんは、凍りついたままのまふくんの顔をしっかりと見据えて。
「あいつ、相当なこと隠してるぞ、たぶん」
「………たぶんって、何ですか」
「まだわかんないってこと。今からアンに確認とる」
用件はそれだけ、と言い、灯油さんは部屋から出て行く。
最後にポツリ、と。
「―…あと、あんまり食事抜くなよ」
部屋の沈黙に落とされた言葉は、優しさに満ちていた。
パタンと扉が閉まったとき、僕は気づく。
―…ああ、灯油さんは、まふくんを困らせたいんじゃないんだ。
向き合わせたいんだ、…と。
天月くんと視線が合う。
どうやら、同じことを考えているようだった。
視線を足元に落とすまふくん。
―…彼の抱えているものは、大きい。
そして、Aちゃんの秘密について。
僕は、まだぜんぜん知らない。
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来賓 - 天月さんだったら天「〜〜」みたいな感じにしてもらえると嬉しいです!お願いします(・ω・`人) (2017年9月28日 19時) (レス) id: 00ddd4f313 (このIDを非表示/違反報告)
カノン - 読み返し3回目です! (2017年8月8日 12時) (レス) id: 451c3d138b (このIDを非表示/違反報告)
CORITTK2(プロフ) - 読み返し10回目(*^^*)なう〜(*´ω`*) (2016年11月27日 0時) (レス) id: 6ac753d7da (このIDを非表示/違反報告)
遥 - 読み返し3週目なうです (2016年11月11日 22時) (レス) id: b5ff9d8745 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃_ayano(プロフ) - 何度読み返しても最高です(*´-`) (2016年9月20日 7時) (レス) id: 1e4aaa14fc (このIDを非表示/違反報告)
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