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*2*彼 とは? ページ3

3月末。
私は、福音不動産の前に来ていた。
足元にはスーツケース。
今日から新生活を始めようと思っている。

あれから、親に挨拶をし、きちんと下調べもした。

支店にも出向いて、手続きも済ませた。

そして、期待と不安が半々のまま、この日を迎えたのである。

福音不動産のドアが開く。

『すみません…Aと申しますが』
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」

中から出てきたのは。
―…ものすごくかっこいい、黒髪の男性だった。

『…!』
「どうかしましたか?」
『い、いえ』

彼が首を傾げる。
私は、急いでスーツケースを持ち直した。
危ない危ない、見とれてた。

「じゃあ、行きましょうか」
『はっ、はい!』

店を出て行く彼を急いで追う。
どうやら、ここから徒歩で行ける距離らしく。
…というか、前を歩く彼の素敵度が半端じゃない。

スーツに黒髪、しかもイケメン。
なんという素晴らしい担当者さんなのだろう。
そう思っていると、彼はぴたりと足を止め、振り向いた。

「あ―…そうだ、入居者は現在7人いるって話、しましたよね?」
『あ、はい』

あわてて答えると、彼はクスリと笑って。

「皆クセモノだから、気をつけてくださいね」
『え…?』

クセ、モノ?
私はぽかんと口を開く。

「あ、AさんのことはAって呼び捨てにしても大丈夫ですよね」
『はい!?』
「俺のことは、…そらるって呼んでください」

そらる

その名前は、私の耳が聞き間違えたのだろうか?

『あっ…もしかして、歌い手のそらるさんのファンとかですか?私も好きで―…』
「―…ぶはっ!」

…ぶは?

「wwここまで言っても気づかないってw可愛いwほんっと可愛いww」
『えぇ…!?』

急に彼―…そらるさんが笑い出した。

戸惑う私を差し置いて、散々笑った後に、そらるさんは言った。

「俺、本人」
『え…?』
「だから、本人だって。これからカラオケ直行しちゃう?」
『…!?』

よく声を聞けば、そういえばそらるさんの地声そのままである。
あまりの驚きに、開いた口がふさがらない私。

でも、確かに納得である。

「じゃあ、ここ真っ直ぐ行ったら着くからね」
『え?』
「俺、あいつらにつかまったらめんどくさいんだ。じゃ」

“がんばってね”
その言葉を残し、そらるさんの背中は見えなくなった。
いつの間にか手には、鍵が握らされていた。

*3*福音不動産にて→←*1*電話



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来賓 - 天月さんだったら天「〜〜」みたいな感じにしてもらえると嬉しいです!お願いします(・ω・`人) (2017年9月28日 19時) (レス) id: 00ddd4f313 (このIDを非表示/違反報告)
カノン - 読み返し3回目です! (2017年8月8日 12時) (レス) id: 451c3d138b (このIDを非表示/違反報告)
CORITTK2(プロフ) - 読み返し10回目(*^^*)なう〜(*´ω`*) (2016年11月27日 0時) (レス) id: 6ac753d7da (このIDを非表示/違反報告)
- 読み返し3週目なうです (2016年11月11日 22時) (レス) id: b5ff9d8745 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃_ayano(プロフ) - 何度読み返しても最高です(*´-`) (2016年9月20日 7時) (レス) id: 1e4aaa14fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さやえんどう | 作者ホームページ:http  
作成日時:2013年2月13日 17時

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