もう、つらい思いなんてさせない。【まふまふ】 (ページ36)

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＊５（届いて）ページ36

貴方side

「運命だ」

幸助さんの腕の中で、私はどうしようもなく絶望した。

私が想い描いていた幸せは、まふくんと過ごしていたあの幸せな時間は、もう、
救いようがないくらいに腐りきってしまっていた。

……これが、私の運命？

ほんの少しの希望も、願いも、なんにも叶わなかった。
過去に囚われれて、抜け出せない絶望の連鎖に堕ちて、おかしくなりそう。

どうして何も叶わないの。

私はただ、まふくんと一緒に成長していきたかった。一緒に、幸せの形を作っていきたかった。
ただそれだけ、それだけなのに。

ひとつも、ひとつも叶わないなら、こんな世界なんて、もういっそ崩れてしまえば………

「ふざけるなッ！！」

そらるさんの怒声が響く。
聞いたことのない声に、一瞬で現実に引き戻される。

「Aさんの未来は、お前が独りよがりに歪めて、壊していいものじゃないッ！！」
「そらる、さ…」

そらるさんのきれいな瞳に、涙が滲んでいる。
まふくんが大きな瞳を揺らして、精一杯の笑顔を浮かべて、右手を再び伸ばしてくれる。

「…まふく…」
「ね、A。大丈夫だよ、大丈夫。そんな運命、僕がバラバラに壊してあげるから。
　大丈夫。Aがどんなに傷ついても、絶望に挫けそうになっても、僕が必ず助けに行くから」

何度も何度も、あやすように「大丈夫」と繰り返すその瞳に、私が映る。

命なんて。

本気で、命なんていらなかった。心の底からこの世界が嫌いだった。

でも、貴方が教えてくれた。
その瞳が私を映すたびに、その声で名前を呼んでくれるたびに、ひとつずつ、丁寧に。

この命が、決して無駄なんかじゃないってことを。

貴方が私を受け入れてくれたから。私の生きる価値を、自分が背負うと言ってくれたから。

貴方がいたから、こんな世界も悪くないかなって、思えたの。

「Aが世界のどこに居たって、僕は君を想ってるから、探し出すから。
　大丈夫、僕が必ず、幸せにして見せるから。

　……だから、」

「世界を嫌いにならないで？きっと、みんなで幸せになれるから」

彼の右手に触れようと、私も一生懸命に手を伸ばす。

まふくん。
お願い、届いて。

指の先が触れて、まふくんの体温が指先から伝わる。
たったそれだけで、心臓が苦しくなるくらい幸せな気持ちになって。

そして次の瞬間、視界がガクンとブレた後、身体が宙に浮いた気がした。

「……動くなって、言ったよね？」