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そらる side
「あ、や…っだ!そこはッ!」
背後の男から与えられる説明しがたい感覚に、生理的な涙で視界がぼやける。
羞恥の感情で、なにも考えられなくなる。
「口を割るには痛みが一番効くんだよ。二番目はなんだと思う?」
俺は幸助と名乗った男を見上げた。
涙の向こうでそいつが唇を歪めたのが分かる。
「快楽だよ」
俺の髪を掴んで、にっこり微笑んでそう言った。
痛みすら感じなくなりつつある神経。
それでも声だけはひっきりなしに出てきて、思考回路を壊していく。
「絶対的な痛みと快楽を交互に与え続ければ、どんな人間でも服従する。
今までは女に使ってきたけど、男はどうかな?」
ね、喋る気になった? と俺の顔を覗き込む。
俺は僅かに残っていたプライドで、あくどい笑みを浮かべる。
「…誰が、お前みたいな奴に…」
幸助の顔から笑みが消えた。
その右腕が上に持ち上げられ、殴られる、と目を瞑った瞬間。
絶望的な言葉が、ドアから飛び込んできた。
「幸助、Aって女見つけたぞ!」
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貴方side
幸助さん…
私は、洗濯機の前でぼんやりと佇んでいた。
また、あの悪夢が始まるのだろうか。
まるで嘘みたいな出来事に、まだ頭がついていかない。
「…まふくん」
無意識につぶやく彼の名前。
まふくんが触れてくれた瞬間に広がる、あのぬくもりを手離したくない。
そう思うのに、神様はそれを許してはくれない。
どうして…?
彼は今、浦島坂田船とAfter the Rainで撮影だと言って家を空けている。
彼のいない空間がこんなにも寂しく感じるのは、不安のせいだと思う。
ふと振動するポケットが目に入る。
そこに入っていたスマホを取り出すと、画面に《まふまふ》と表示されていた。
まふくんからだとわかって嬉しくなる。
「もしもし?まふくん?」
〔うん、ちょっと聞きたいんだけど、そらるさん今そっちにいる?
もう約束の時間にだいぶ遅れてるんだけど…〕
「…そらるさん?きてないけど…」
〔そっかぁ…どうしたんだろ。ありがとね。なんかあったら僕に連絡してね〕
「うん、ありがと。じゃあね」
そう言って電話を切った。
しばらくの間、ちょっぴりの幸せの余韻に浸っていると、ふと恐ろしい考えが頭をよぎった。
まさか……幸助さんが?
そう思った瞬間、私は家を飛び出して、かつての私の家に向かっていた。
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夕焼涙雫(プロフ) - 栗原 真白さん» 面白かったですよいー(*ゝω・*) (2018年9月23日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - 夕焼涙雫さん» ほ、ほんとですか…?!嬉しいです、ありがとです…!! (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - Canpasuーキャンーさん» ありがとうございます(*>ω<*) (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
夕焼涙雫(プロフ) - 完結じゃー!時間がある時(=休日)に読み返そう (2018年9月20日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
Canpasuーキャンー(プロフ) - 完結(?)お疲れさま!そらるさんの次回作、楽しみにしてるよ! (2018年9月19日 20時) (レス) id: 1cab1691ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青瀬真白 | 作成日時:2018年6月26日 6時