もう、つらい思いなんてさせない。【まふまふ】 (ページ32)

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心中ページ32

まふまふside

〔う、う…っ、も…やだ…許して…っ…誰か…〕
「そ、そらるさん？どうしたんですか、大丈夫ですか？」

電話の向こうで、そらるさんが泣きながら何度も助けを求めている。
初めて聞くそらるさんのそんな声に、僕は戸惑いを隠せずにフリーズする。

「え、まふ？どうしたん？そらるさんなんやろ？」
「いや…そらるさんだけど…なんか様子が…」

皆にも聞こえるようにスピーカーにした途端、電話の声がいきなり変わった。

〔もしもーし、聞こえるかな？俺だよ、俺〕
「随分馴れ馴れしいオレオレ詐欺やな」
「坂田ちょっと黙ってろ」
〔相川真冬くん…だったかな？今の声、聞こえたよね？〕

粘着質なこの声、幸助さんだ。
そう気づいた途端、僕はスマホに向かって怒鳴りつけていた。

「そらるさんに何してるんですか！？！？」
〔うおっ…びっくりしたァ…やだな、そんな大して酷いことはしてないよ？〕
「今すぐそらるさんを解放してください。どこまで最低な人なんですか、あなたは」
〔じゃあ、君が助けにきたらいいじゃない。大切な相方と、〕

次の言葉を聞いた瞬間、全身の血が凍りついたような気がした。

〔君が一度手に入れたはずの、Aを。〕

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貴女side

車から降ろされて、かつての私の家だった２０階建マンションを見上げる。
家の中へ入ってみると、湿った空気が流れてきた。

「そらるさん…？」

数ヶ月ぶりに足を踏み入れた部屋の中は薄暗くて、決して居心地のいい空気ではなかった。
お風呂場に倒れていたそらるさんを見つけて、必死に身体を揺さぶってみる。

「そらるさん、そらるさんっ！」

大声でそう呼んでも、そらるさんはピクリとも動かない。
気を失っているのだろうか。

「ああ、そらるって言うんだ、そいつ。さっきまでいい声で啼いてたんだけどね」
「…幸助、さん…」

震える声で、彼の名を呼ぶ。
私を探し出す為だけに、そらるさんにこんなこと…酷すぎる。

「どうして、そらるさんまで…？どうして、そこまでして私を？」
「どうして、か」

ぐっと顔を近づけて、幸助さんが笑った。

「俺はきっと、お前じゃないと結局ダメなんだよね。」

だからよりを戻そうと思ったんだけど、知らない男がお前の隣にいたからさ。
取り戻そうにも、彼奴が邪魔なんだよね。

だからさ、A。

「俺と、心中しようよ」