年上彼氏に溺愛されていますⅢ【センラ】 (ページ5)

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お迎えページ5

『疲れた…』

千羅さんのことで質問攻めにあった講義の後、私はそう独りごちた。あんなに一斉に質問攻めされる機会が無かったため、気圧されてしまった。

『あ、LINEがきてる…』
「深山さん！」

今日はもう帰るだけだと思い、スマホを見るとLINEの通知が来ていた。誰からの連絡か確認しようとしていると、後ろから前田君に声を掛けられる。

「もう帰る？俺も帰るところだから、良ければ駅まで一緒に行かない？」
『うん、いいよ』

特に断る理由も無いため、隣に並んで校門まで向かって歩く。

「次はテストだと思うと緊張するな…」
『前田君は中間発表の時も堂々としていたし、きっと大丈夫だよ』
「そうかな…？深山さんにそう言ってもらえると嬉しいな」

少し顔を赤くして眉を下げて照れ笑いする前田君は少しだけ千羅さんに似ていて、すぐに千羅のことを思い浮かべる自分に呆れつつ笑ってしまった。

「深山さん、あのさ、かれ「Aちゃん？」」
『千羅さん…？！』

真剣な表情で何かを言いかけた前田君の言葉に被って、好きな人の声が聞こえた気がして、慌ててそちらを振り返る。校門の前に見間違えるはずのない千羅さんの姿を捉え、私は思わず前田君のことを置き去りに千羅さんのもとへ駆け寄った。その後ろで前田君が私に腕を伸ばしていることなんて知らないまま。

『どうされたんですか？』
「たまたま取引先が近くでして、Aちゃんに会えないかなーと思って来てしまいました」
『お仕事は大丈夫なんですか？』
「今日は商談終わったら帰ってええ、って上司が言ってくれまして。今日の夜には名古屋に帰るんですけど、それまで暇なので、俺に付き合ってほしいなーと思って」
『もちろんです！』

暫く会えないと思っていたのに、会うことができて、更に迎えに来てもらえるなんて、こんなに嬉しいことはない。嬉しくて緩む頬を思わず両手でおさえる。

「んふふ、良かった、Aちゃんも嬉しそうや。…お友達とは予定なかった？」
『はい。…あ、』

千羅さんの視線の先を察して、舞い上がっていた自分が急に恥ずかしくなる。意を決して振り返ると苦笑いする前田君の姿。

『ま、前田君…！えっと…ま、また来週！ごめんね！』

早口で別れの挨拶を告げ、千羅さんの背中を押して急いでその場を離れる。去り際、千羅さんがチラリと視線を後ろに向け、ポツリと呟いた。

「無自覚だからこそ残酷やな」
『どうしました？』
「こっちの話。さ、どこ行こか？」

千羅さんの言葉を聞き返すこともできないまま、私たちは歩き出したのだった。