○ ページ22
(本編「知らない」〜「虚勢」辺りの裏話です)
浦島坂田船か、Aちゃんか、どちらを選べばいいのか分からず黙り込んだ俺を見かねて坂田が口を開いた。
「そんな難しく考えなくてええんとちゃう？センラはどうしたいん？」
「俺は…どっちも大切で、」
「ならそれでいいじゃん」
口ごもる俺の言葉に被せるようにうらさんが言う。
「どっちかを選ぶんじゃなくて、どっちも守る方法を見つけよう。な？」
ニヤリと笑ううらさんは本当に格好良くて。一緒に頷いてくれる志麻君と坂田にも感謝しかない。良い人たちに恵まれてると改めて感じるのだった。
「というわけで、これからなんだが。暫くはセンラに彼女がいることは伏せておいた方が良いだろうな」
「急に話したら絶対大変なことになるもんなぁ」
「そうですね…」
「っていうか、まずAちゃんに歌い手のこと話すべきやろ。今あの子、一人で飯食ってるんだぞ」
まーしぃーの言葉にハッとする。メンバーに彼女がいる事を話せた安心感で、Aちゃんの状況を考えていなかった。
「場合によっては、隠し事してた！ってキレられて別れ話になるかもしれないし」
「まーしぃー勘弁してください…そんな事起きないとは言い切れへんのやから…」
Aちゃんの性格を考えると直情的になることはないと思うが、優しい子やから心の中に不満を抱え込んだまま離れていってしまう可能性はある。
「そもそも彼女さんはセンラが歌い手って本当に知らないのか？」
「嘘はついてないと思います。…でも、もし気になるならうらたん達が見て、判断してください」
彼女と出会ってから、俺たち二人の間で「歌い手」というワードは一度も出てきていない。俺が歌い手であることを確認するような鎌をかける素振りもないし、彼女のスマホに入っている音楽は俺たちが歌うようなジャンルとは違うものばかりだった。
ーこれで全てが演技だったとするなら、人間不信になれるレベルよな。
ぼんやりと考えていると、まーしぃーが俺のスマホを見て「お」と声を上げた。
「Aちゃん呼び出し成功〜」
「は？」
「お店の場所送っておいたから、数十分後には来るでしょ」
「志麻ナイス」
まーしぃーから慌ててスマホを取り返すも、俺と彼女のトーク画面は朝の待ち合わせから動いてない。という事はー？
「Aちゃんの連絡先盗みましたね、まーしぃー！」
「緊急事態だから仕方ないだろ」
飄々と笑うまーしぃーに、悔しいながら文句を言うことができず、俺は歯軋りするのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - Mouse Minnieさん» Mouse Minnieさん、リクエストありがとうございます！お返事が遅くなってしまい、大変申し訳ございません… 体調不良の逆バージョンですね。承知いたしました！お時間がかかってしまうかもしれませんが、必ず書かせて頂きます。 応援ありがとうございます！ (2020年4月9日 23時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
Mouse Minnie(プロフ) - リクエスト失礼します。体調不良の逆バージョン(センラさんを夢主ちゃんが看病する)が見たいです！よろしければ、お願いします！これからも応援しています！ (2020年3月11日 18時) (レス) id: e2d70aaa9e (このIDを非表示/違反報告)
子狐 - まだリクエストってよろしいですか？もし書いて頂けるのならば、主ちゃんが体調を崩したり、入院したりして、センラさんが看病とかをするのが見てみたいです。 これからも頑張ってください！ (2020年2月10日 22時) (レス) id: c560589b6b (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - しろもんさん、コメントとリクエストありがとうございます！ お返事がすっかり遅くなってしまい、申し訳ございません…！ リクエスト、承りました。少々お時間を頂いてしまいますが、必ず書き上げますので、楽しみにして頂ければ幸いです！ (2020年1月27日 20時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
しろもん* - リクです！本編で、志麻さんが、夢主を助けている（？）場面（2の1,2話あたりです）の志麻さんの気持ち的なお話を作って欲しいです。（語彙力なくてすみません。） (2019年12月24日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月26日 16時
