瞬間的感情論【歌い手】

第十一幕 ページ13

「…………はぁ、はぁ、はぁ…………」

あれからしばらく走って、彼が止まったのは一軒のカフェだった。

あんなに走ったのは久し振りだったから、息が切れて情けない。

チラリと彼を見れば…………

「……ゼェ、ゼェ、ウゲッ。」

………私以上にグロッキーな姿になっていた。

「あ、あの、大丈夫ですか？」

恐る恐る訊けば、ひとしきり咳き込んだ後に

「う、うん。大丈夫。日頃運動してないだけだから。」

と答えが返ってきた。
そしてそのまま、

「いやーごめんね。急に連れて来ちゃって。」

にこやかな笑顔で続けた。

「いえ………。私の方こそ、すいませんでした。」

「いーのいーの。それよりさ。」

「はい……？」

「君がぽるさんでしょ？」

……………………え。

ふと、時計を見る。
今は11時45分。
駅からは多分15分くらいは走っていた。

つまり、この人と会ったのは大体11時半前後。

私はもう一度、彼の顔をよく見る。

まさか、


この人が




「…………スズム、さん………？」


彼ーースズムさんは、ニヤリと笑うと、


「だいせーかい☆」

と言い放った。

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