青い鳥を始めたら有名になった件について【歌い手】

｜５｜坂田.side ページ5

出会いは唐突。
沼に落ちたのは一瞬だった。


その日は特に暇で、うらたさんもまーしぃもセンラも用事があって遊べないという事で一人でゴロゴロとしていた時の事である。

何もすることないしなぁ、と暇つぶしに読んでいたネット漫画の中に、不思議と引き込まれる表紙のものを見つけた。


お腹がすいてる時は何を食べても美味いと言うように、暇すぎる時は何をしても楽しいという事で、完全な興味本位でその表紙をタップする。


「……なにこれぇ」


ギャグもありシリアスあり恋愛ありの鉄板を詰め込んであるにも関わらず、ストーリーがぐちゃぐちゃしていなくて、面白い。
それに加え、一つひとつの絵が丁寧で繊細だが、しなやかに伸びる曲線やはっきりとしてる力強い瞳。


＿＿正直、めっちゃ好み。


こんなん、ハマるしか無くないか！？と、その本を書いた【先生】の事について調べてみると、男か女かも分からない先生は他にも幾つかの読み切り本を出しているらしく、全て人気作品だと言う。

Webで公開されている試し読みを見たけれど、冒頭部分から読者を物語に引き込もうとする不思議な力が働いていた。


俺は自身が座っていベットに寝転び、先生が描いた漫画が表示してたるスマホを抱きしめる。


多分、坂田家は俺の事を思う時、いつもこんな感じなんやろなぁ。


「(……先生、好きや！！！)」


勿論ファンとしての好きだが、もうなんだろう。堪らないくらい好きで沼に落ちた。

片足が入ったからにはもう抜け出せない深い沼に、確実に落ちた。

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